原子力規制委員会は9月23日、社長はトップとして原子力安全の責任を担うなどと明記した東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の保安規定の変更案を了承。東電が同原発を再稼働する原子力事業者としての「適格性」を認めたことになります。
また、同原発7号機の設計及び工事計画についても技術的な議論は終わったとして、東電が補正書提出後、原子力規制庁が正式に認可する見通しです。
保安規定は、事業者が守るべき原発の運用や保守管理などについて定めたもの。事業者が作成し、規制委の認可を受けます。違反した場合は原子炉の停止などの罰則が定められています。
先月の規制委の定例会合で同保安規定を議論した際、委員から安全上重要な事項の決定過程の公開を定めるよう求める意見がありました。東電はこれを受け、安全に関する社長の判断について「内容を社会に速やかに発信する」などと明記した変更案を示していました。
2017年の柏崎刈羽原発6、7号機の許可の際、福島第1原発事故を起こした東電の原子力事業者としての「適格性」が議論になり、東電は規制委に、福島第1原発の廃炉を「やり遂げる」、「安全性をおろそかにして、経済性を優先する考えはない」などとした文書を示していました。東電は、この文書などで示した「7つの約束」(別項)の内容を保安規定に盛り込むことを約束していました。
東電は今年3月、保安規定の変更を申請。規制委はこれまで「7つの約束」の具体化を求めていました。
更田豊志委員長は、委員会後の会見で「保安規定に記されることに価値がある」などと説明しました。
東電「改善策」検証なし
立石雅昭・新潟大学名誉教授、新潟県の「原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」委員の話 規制委からの指摘を踏まえて、東電社長の法的責任を明確化し、「七つの約束」についても「順守する」と明記したとされています。これらの点は、ある意味当然ですが、保安規定に書き込んだことを東電が誠実に実行する保証はありません。
福島第1原発の事故について、社長はもとより、経営陣の誰もがその責任を取らず、裁判において「責任はない」と主張してきた現実と甚だしく乖離(かいり)しています。まずは、福島原発事故の責任を取ることから始まるでしょう。
東電は、2002年の原発検査データのねつ造、11年の福島原発事故時の「メルトダウン」隠蔽(いんぺい)という重大な不祥事について、その都度、「反省と教訓」ならびに「改善策」を打ち出してきました。それらの教訓や改善策がどのようにいかされたのか検証がなされていません。
保安規定に書き込まれたことをもって、東京電力の企業体質が改善されると規制委が判断するのは、根本的に誤っています。
まず福島原発事故の責任を問うべきであり、さらに、この間の「反省と教訓」、「改善策」の検証を行うべきです。
東電「7つの約束」(要旨)
(1)廃炉をやりきる覚悟と実績を示す
(2)柏崎刈羽原発の安全対策に必要な投資を行う
(3)原発の運営は安全性の確保を前提とする
(4)不確実・未確定な段階でもリスク低減に取り組む
(5)規制基準順守にとどまらないさらなる安全性を向上させる
(6)社長はトップとして原子力安全の責任を担う
(7)社内の関係部門の異なる意見や知見を一元的に把握する
(「しんぶん赤旗」2020年9月24日より転載)