東京電力福島第1原発の放射能汚染水を処理した後に薄めて海に流す案などの処分方法を検討している政府は7月17日、福島県内で関係者から意見を聴く会合を開きました。5回目の今回、同県の廃炉に関する県民会議に参加する4人の周辺住民が意見表明。「海洋放出に反対。県民に賛成はほとんどいない」などの声が出ました。水産関係者は、原発事故の実害と風評被害の苦難を訴え、消費者の安心なしに解決しないと強調しました。
川俣町の菅野良弘さんは海洋放出ありきの議論を批判しました。タンク増設のための敷地確保を政府がどれだけ検討したのかと問いかけ、「難しいという報告に納得できない。縦割り行政という感じがぬぐい切れない」と述べました。9年前に突然、避難指示を受けて以来の国に対する不信感を語りました。
大熊町の井戸川洋一さんは、安全なら流せばいいといった意見への憤慨の念を表しました。トリチウム(3重水素)の性質についての政府の説明に「上から目線。ついていけない」と苦言。楢葉町と広野町の住民は、若い世代を巻き込んだ議論や丁寧な説明による全国的な理解を求めました。
同県の水産市場連合会の石本朗会長は、親潮と黒潮がぶつかる良い漁場なのに試験操業から脱出できず水揚げは震災前の14%で、他県から仕入れなければならない現状を「苦しい。悔しい」と切々と訴えました。青果市場連合会の佐藤洋一会長は、風評被害が払しょくされない苦しみを説明しました。
県議会の太田光秋議長は、県内の市町村から環境放出反対や慎重な対応を求める意見書が相次いで出されていると紹介しました。
(「しんぶん赤旗」2020年7月19日より転載)