高浜町元助役の森山栄治氏(故人)からの金品提供の対応は個人に任せた関西電力。一方、森山氏の関連業者への便宜供与は、社長や事業本部長が現場に指示を出すなど、組織ぐるみで対応した。
第三者委の報告書によると、森山氏は2010年8月26日、「八木誠社長(当時)との約束だった」として、原子力事業本部の森中郁雄副事業本部長に対し、大飯原発の警備業務を自らが取締役を務めていた「オーイング」(高浜町)に切り替えるよう要求した。
5日後、指示を仰がれた八木社長は「大飯の業務は約束していない」としつつ「リスクを考えた上、O社に切り替えざるを得ないなら最悪仕方がないと思う」と返答。最終的にオーイングになることはなかったが、要求をのまざるを得ないとの認識を示した。
一方、11年9月に「塩浜工業」(敦賀市)の元請け参入を要請された豊松秀己本部長は「仮設でもいいから、なんか塩浜に元請けで出せる工事がないかどうかチェックしておくこと」と指示した。
指示を踏まえ、便宜供与はさまざまな形で行われた。
▽1件当たりの工事発注額を増やす▽年度ごとの工事発注額を事前に約束しノルマ化する▽希望額の工事発注を用意する▽入札を経ず特命発注する▽競争入札で有利になるよう概算額などを事前に伝える―。実際に、関電が「吉田開発」(高浜町)と塩浜工業にそれぞれ情報を伝えていた計9件の工事は全て両社に落札された。
関電幹部らは、森山氏の前ではまさに“まな板の上のコイ”。第三者委の但木(ただき)敬一委員長は14日の記者会見で「森山氏と事を荒立てないことが、事実上の業務命令だった」と批判。報告書では関電の行為を「透明性のない『地元重視』がもたらす弊害についての認識が甘かった」と断罪した。
森山氏への対応について詳しく書かれた2014年の引き継ぎ資料が残っている。「自分に従うと分かるまで指導。中途半端な対応が一番危険」「できれば毎週電話が必要。人恋しい」「年間ノルマをこなす」
第三者委は「歴代何十人もの幹部が脈々と問題行為を引き継いだ。そのつけは決して軽くはなかった」と厳しく非難した。
(川上桂)
(福井新聞2020年3月19日付けより転載)