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行き場のない使用済みMOX燃料(下)・・巨費投じても保管に難

 使用済みMOX燃料は、発熱量が下がりにくい特徴があります。

高い発熱量長期

 当面原発敷地内にあるプールで冷却を続ける必要がありますが、地震などでプール水が失われた場合、発熱量の高い燃料は火災に発展する危険性があります。使用済みMOX燃料はその危険性のある期間が、通常の使用済みウラン燃料より長くなると言えます。

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は、使用済みMOX燃料の保管について「乾式(貯蔵容器)に入れた時点でかなりリスクは小さくなる」と発言しています。

 しかし、電力会社で乾式貯蔵については実際には具体化はされていません。プルサーマルを実施している伊方原発や玄海原発では、使用済み燃料プールの空き容量がわずかとなっていることから、金属製の乾式容器に使用済み燃料を保管しようと、規制委に申請しています。しかし、いずれの申請でも使用済みMOX燃料は、保管対象になっていません。

 プルサーマルで使った使用済みMOX燃料の発熱量は、現在申請されている乾式貯蔵容器に移すことが許される燃料と同程度まで下がるには、100年近くかかります。

 また、使用済みMOX燃料は、使用済みウラン燃料と比べて、遮蔽(しゃへい)しづらい中性子線が10倍程度。水中から出した場合は、特に作業員の被ばくが問題になります。

メリット限定的

 高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定など高速増殖炉の実用化の見通しが立たない中、政府は、使用済み核燃料の全量再処理という方針と、利用目的のないプルトニウムは持たないという国際社会への約束を両立させるためプルサーマルの推進を続けています。電力会社も、16~18基でプルサーマルの実施を目指すとしていました。

 経済産業省は、ウラン燃料を再処理すると高レベル放射性廃棄物の体積や有害度を低減でき、最終処分場の面積を減らせると“メリット”を強調します。しかし、使用済みMOX燃料を再利用せずに処分した場合、使用済みMOX燃料の発熱量が長期間高いため、効果は限定的とされています。

 建設中の日本原燃六ケ所再処理工場(青森県)は、建設費や今後の操業に必要な費用などの合計が約13・9兆円。また、原燃のMOX燃料加工工場(同県)にかかる費用は約2・3兆円といいます。これほどの巨費を投じてMOX燃料を造りプルサーマルを実施し、使用済みウラン燃料以上に厄介な使用済みMOX燃料を生み出すことに、合理性はありません。

 (おわり)

(「しんぶん赤旗」2020年3月15日より転載)