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女川原発動かすな 自公の強行に住民怒り心頭・・宮城 県民投票条例案 2度の否決

 東日本大震災で被災した東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機の再稼働に向け、政府が新規制基準「適合」判断や地元への「同意」要請を行い、重要局面を迎えています。原発事故の教訓や民意を無視した再稼働を止めようと、市民と野党が共同を強めています。

 (中川亮)

 「『安全神話』が崩れた今、事故は起こるものと考えなければならない。県民の命と生活を守るため、原発再稼働を絶対許してはいけない。皆さんとワンチームでたたかう」

 再稼働の是非を問う県民投票条例案が自民・公明両党会派の反対で否決された3月3日の宮城県議会。開会前に議会庁舎内であった集会で、超党派の「脱原発をめざす宮城県議の会」会長の佐々木功悦県議(会派=みやぎ県民の声)はこう訴えました。

民主主義踏みにじる暴挙

県民投票の実施を求めて集まった市民と野党県議ら=3月3日、宮城県議会庁舎

 同条例案は、2月に立憲民主党や国民民主党などが加わる「みやぎ県民の声」、日本共産党、社民党、「無所属の会」の4会派が共同提出。ところが自公は、趣旨説明も質疑・討論も省いて採決を強行し否決したのです。前日にこの動きを聞きつけた約100人の市民が傍聴席に詰めかけ、「議会制民主主義を踏みにじる暴挙」(佐々木県議)に議場は騒然となりました。

 県民投票条例をめぐっては、2019年2月に市民団体が11万人余の署名を集めて制定を直接請求。このとき自民は「女川原子力発電所と共存・共栄してきた経緯がある。住民間に分断を招く」、公明は「ポピュリズム(大衆迎合)の負の側面があらわれる」などとして反対、否決しました。

新たな「安全」をふりまく

 女川原発は、過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ「沸騰水型」。震災当時、外部電源5系統のうち4系統が失われ、原子炉建屋が浸水するなど、重大事故になりかねない事態に陥りました。2号機の原子炉建屋は多数のひび割れも見つかっています。

 政府地震調査研究推進本部の「将来発生する地震評価」(19年1月1日時点)では、宮城県沖でのマグニチュード7級地震の30年以内の発生確率は90%程度とされています。

 東北電力は「安全対策」の宣伝に必死です。「国内最高レベルの防潮堤」などをアピールし、地元紙への全面広告や電車内の窓上ポスターを張り巡らせています。

 しかし立地・周辺自治体では事故への根強い懸念があります。

 原発関連業者から支援を受けて選挙をたたかい、「原子力発電所反対と表立って言ってこなかったし、今もそうです」と語る女川町議会の元議長。「将来的には原発はやめるべきだと思っています。自然の猛威はガードできない」と「安全対策」に疑念を抱いています。

 県民投票条例案が2度も否決され「残念です。住民の意思で決められるようになればよかった」と失望をあらわにしました。

“逃げられない”避難計画

 町議会には2月21日、避難計画の実効性が確認できるまで再稼働に同意しないよう求める請願書が、272人の署名を添えて住民団体から出されました。その後も署名が広がり、応じた人から「再稼働は無責任。福島の親族が今も避難させられている」「これからの世代がかわいそう」との声が寄せられました。建設業者の男性は「大雨などで道路の通行止めが起き、原発事故時に“陸の孤島”になれば逃げられない」と心配しています。

 避難計画の策定を求められる女川原発30キロ圏内の7市町への「毎日」のアンケート(19年12月25日付)では、計画に「実効性がある」との回答はゼロ。避難経路の渋滞などの課題をあげています。

 30キロ圏内に一部が含まれる美里町議会は、女川原発再稼働反対の意見書を12年3月、19年12月に可決。「事故により大量の放射性物質が放出されれば将来にわたり広範囲で深刻な事態が想定される」と危機感を示しています。

 県内第2の都市で14万人余の人口を有する石巻市の住民は、避難計画に実効性はないとして、県と市が再稼働に同意しないよう求める仮処分を仙台地裁に申し立てています。住民側は、道路渋滞に加え、病院の患者や高齢者施設入居者、要支援者らの避難が困難で、「複合災害」対策もないと指摘しています。

 避難計画をつくった自治体は「必要な見直しを適宜行う」と説明。しかし、申し立てに加わっている「女川原発の避難計画を考える会」の原伸雄代表は「小手先の修正で対応できるものではない」と再稼働中止を求めます。

再稼働できない世論へ

「女川原発の再稼働を許さない! みやぎアクション」世話人 多々良哲さん

 安倍政権は、破綻した原発再稼働をなぜごり押しするのか。村井嘉浩県政も、原発だけでなく水道民営化も含め、「アベノミクス」、安倍政治の新自由主義的な流れのお先棒を担いでいます。原発も水道民営化も、結局もうかるのは大企業です。「誰のために政治をやっているのか」が問われています。

 2度にわたり県民投票条例案が否決され怒り心頭です。次は6月、9月の県議会が新たな焦点になってきます。そこにむけて議会請願など、村井知事が再稼働に同意したくてもできないような大きな世論をつくるさまざまな手だてを考えています。県民投票実施を求めた11万人の署名、県民運動に確信をもって、あきらめずにたたかいます。

(「しんぶん赤旗」2020年3月15日より転載)