関西電力の役員が高浜原発のある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた疑惑で、関電の第三者委員会が調査報告書を公表しました。報告書は、金品を受領したのは75人、総額約3億6000万円相当にのぼり、昨年公表の社内調査より人数も金額も上回ることを明らかにしました。原発という「国策」をめぐって多額の資金が動き、電力会社と立地自治体の“有力者”との深刻な癒着が生まれ、温存されてきたことは全く異常です。関電に原発事業を担う資格はありません。政府は、関電任せにせず、深まる「闇」の解明に責任を負うべきです。
恐れた「暗部の暴露」
関電の会長、社長らが元助役・森山栄治氏(故人)から現金や高価なスーツ仕立券、金貨など多額の金品を受け取っていたことは昨年秋に発覚しました。原発関連工事を請け負う建設会社が元助役に資金提供しており、国民が払った電気料金を原資とする「原発マネー」が関電に還流していた疑惑として大問題になりました。
昨年(2019年)10月、関電は隠していた社内調査結果を公表し、原子力担当部門を中心に役員23人が金品を受領し、総額は3億2000万円相当だったなどと認めました。しかし、調査対象期間は2006年~18年に限定され、元助役の金品提供の狙いや資金の元手、政治家の介在の有無など不明な点があまりに多く、隠ぺい姿勢に対し批判が集まりました。関電は第三者委を設置し、同委が聞き取り対象を広げるなどして調査を行いました。
今回の報告書によれば、元助役からの金品提供は1987年に始まりました。高浜原発3、4号機の増設をめぐり、元助役が「不適切」な地元での根回しに関わっていたことなども指摘しています。長期にわたる異常な関係の構造的根深さを浮き彫りにしています。
金品の額が2011年の東京電力福島第1原発事故以降、「急激に増加」したと認定したことは重大です。報告書は金品提供の狙いについて、元助役が自身の関連企業への見返りを期待したものと述べています。原発再稼働へ向けた「安全対策工事」などを通じ、関電が特定業者の便宜をはかった違法性の疑いは強まるばかりです。再稼働をめぐる利権をさらに徹底的に追及することが不可欠です。
報告書は、元助役からの金品提供を関電役員側が断れず、長年隠ぺいした背景に、高浜原発3、4号機増設時の「暗部を暴露」され、原発が停止することを恐れたり、原発の「安定的な運営・稼働を重視する考え」が強く、それがコンプライアンス(法令順守)を上回る至上命令になったりしていたなどと記述しています。しかし、「暗部」について、報告書は突っ込んだ解明をしていません。
国政調査権の行使も必要
昨年公表の社内調査で、元助役が国会議員や県議会などに「広い人脈を有し」と明記していた問題も、今回の報告書では明らかにしませんでした。関電の第三者委では全容解明はできません。
安倍晋三政権が進める原発再稼働をめぐる政治家らの関与は絶対にあいまいにはできません。安倍政権は「原発マネー」疑惑究明に背を向けず、解明に責任を果たすべきです。国会は、国政調査権を行使し、関係者を招致し真相解明を行うことも必要です。
(「しんぶん赤旗」2020年3月15日より転載)