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東日本大震災・福島原発事故9年 被災地から(3)・・置き去りの「在宅被災者」 宮城県

津波でたまったヘドロによる床と床下のカビを確認するふなやま候補(左)と佐藤さん=3月8日、宮城県石巻市

いまだ携帯トイレ…

 東日本大震災から9年を迎えた今も、被災したままの自宅に暮らしている「在宅被災者」が大勢残されています。復旧以前に実態把握すらされていません。宮城県石巻市の在宅被災者の実情をみました。

実態調査されず

 風呂・トイレが使えず、居間と台所以外の床がはがれた自宅に独居する林とみ子さん(70代)=仮名=。トイレは携帯トイレ、入浴は週1回のデイサービスで我慢しています。

 行政による在宅被災者の調査は数年前まで実施されておらず、多くが置き去りになっています。林さんは「世間に申し訳ない」と誰にも相談できず、実態が把握されたのは2016年でした。

 在宅被災者の支援と調査に取り組んでいる一般社団法人「チーム王冠」がねばり強く行政に働きかけ、修繕費100万円の支援が決定。しかし、修繕工務店への3社見積もりを要求され、受給の足かせになっています。「早くトイレだけでもつけたい。お金が足りたら、お風呂もつけられれば…」と、林さんはつぶやきます。

 同市の佐藤悦一郎さん(75)の自宅の床はカビが広がり、歩くと大きくたわみます。腐食が進んだ柱は虫がわかないよう自分でテープで補強しています。

 震災時、両ひざに大けがをし、避難所にもいけませんでした。他の病気も連続して患い、今は薬を12種類服用。被災者の医療費負担免除も終わり、月の医療費負担は1万6000円にもなります。

 また、市の住宅再建補助事業は、市町村税の滞納世帯は対象外。生活に余裕がない佐藤さんが補助を受けられないまま、3月15日で事業は終了します。

早急に支援策を

 佐藤さんは「最後の一軒まで復旧すると言っていたはずなのに、医療費免除は切られた上、家は直せない。あまりに薄情です」と嘆きます。

 3月8日、日本共産党のふなやま由美衆院比例候補がチーム王冠の伊藤健哉代表理事と懇談し、林さん、佐藤さん宅を訪れて実態を聞きました。

 チーム王冠によると、在宅被災者数は宮城県に6万人、石巻市に1万3000人と推測されています。しかし、いまだに政府も自治体も数や状況を正確に把握できていません。

 紙智子参院議員が19年4月に国会で、実態調査を行うよう追及。総務省は同年11月に調査結果を公表するとしましたが、台風19号被害を理由に延期したままです。

 伊藤代表は「あれから何カ月たつと思っているのか。情報があればさまざまな対策を検討できる。調査結果は、自治体にとっても私たちにとっても肝なんです」と憤ります。

 ふなやま氏は「早急に調査結果を明らかにさせ、支援策を打ち出すことが必要です」と応じ、国へ働きかけると約束しました。

 (高橋拓丸)

 (つづく)

(「しんぶん赤旗」2020年3月11日より転載)