日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 東日本大震災・福島原発事故9年 被災3県議団長に聞く(上)・・ 福島 神山悦子さん 県民に寄り添う復興を

東日本大震災・福島原発事故9年 被災3県議団長に聞く(上)・・ 福島 神山悦子さん 県民に寄り添う復興を

神山悦子(福島県・日本共産党県議団長)

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から3月11日で9年。被災地の現状と復興の課題について、福島、宮城、岩手3県の日本共産党県議団長に聞きました。

 福島県では避難生活を続けている人が4万人以上(県発表)、実際にはその約2倍の県民が故郷に戻れないでいます。いまだに復興の道筋を描けない状況下にある避難区域住民をはじめ、県民一人ひとりに寄り添った復興がいっそう求められます。

隠ぺいと矮小化

 東京電力福島第1原発の放射能汚染水の処理をめぐって、政府小委員会が「現実的」だと示唆した海洋放出方針が大問題になっています。東電はこれまでもトリチウム(3重水素)以外の基準値を超える放射性核種がタンクの8割以上にあったことを隠ぺいしていました。トリチウムだけに矮小(わいしょう)化し、「薄めて海洋に放出する」という言い分は県民の願いとけっして相いれません。

 2月下旬に最後の魚種が出荷制限を解除され、本格操業に光が差してきた県漁連の会長は、海洋放出反対を明確に表明しています。隣の茨城県知事も「白紙の段階で検討を」と訴えています。国は海洋放出をやめ、当面はタンクでの地上保管を継続すべきです。

 東電は昨年7月、福島第2原発の廃炉をようやく決断しました。「オール福島」で求めてきた県内原発全10基廃炉が事故から約8年5カ月を経て実現しました。第2原発の廃炉には44年かかると言いますが、第1原発の廃炉作業を見ても工程通りに進むとは思えません。国は廃炉作業こそ国家プロジェクトに位置づけるべきです。

 その一方で安倍政権が国家プロジェクトに位置づけたのは、「福島イノベーション・コースト(国際研究産業都市)構想」です。2020年度の県当初予算案が1兆4418億円、復興関連予算は5048億円です。そのうちイノベーション構想には17・3%の876億円を計上しています。17~19年度の3年間では国費を含め約2300億円に上っています。

83%「知らない」

 しかし、昨年夏の県政世論調査では、同構想を「知らない」と答えた県民が83・3%に上る認知度の低さでした。

 目立つのは、水素製造装置の実証運転、石炭ガス化複合発電(IGCC)火力発電所など「復興」名目の便乗型事業です。環境、医療・介護、子育て・教育など被災者、県民の願いを実現させる復興こそ求められています。

 県は3月末で帰還困難区域の富岡町、浪江町、葛尾(かつらお)村、飯舘村の仮設・借り上げ住宅の無償提供を終了するとしています。20年度の「復興10年」を契機にした国や県の被災者支援切り捨てを打ち破る取り組みが大事です。

 (福島県・野崎勇雄)

(「しんぶん赤旗」2020年3月11日より転載)