東京電力福島第1原発事故で福島県から北海道に避難した被害者253人が、精神的苦痛を受けたとして国と東電に対し約42億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月10日、札幌地裁でありました。武藤貴明裁判長は89人に約5290万円の支払いを国と東電に命じました。
全国で約30ある同様の集団訴訟で一審判決は15件目。国と東電の双方を相手取った11件のうち、国の賠償責任を認めたのは、昨年3月の松山地裁に続いて7件目です。
判決は、「10メートルを超える津波が原発に到来することを予見することができた」とし、2002年に地震調査研究推進本部が公表した長期評価に基づいて、国を断罪しました。
判決後、裁判所前で掲げられた垂れ幕には「国の責任認める」と「苦念届かず」の文字が。判決が国と東電の責任を断罪し、自主的避難者への慰謝料の支払いなど「避難の合理性・相当性」を認めたものの、「損害論」では、大幅に請求を減額し、9年間の原告の苦しみに見合ったものにはなりませんでした。
中手聖一原告団長、宍戸隆子事務局長は記者会見で「国と東電の責任を明らかにできたこと、自主的避難を含めて避難の必要や相当性を認めてもらえたことはよかった」「避難で失ったものの大きさをすべて認めてもらえなかったのは残念だけれど、一歩前に進めた」と語りました。
原告の一人は「心が折れそうになることもあったが、国の責任を認めた判決に、この国にも少し希望が見えた気がします」と述べ、ほほ笑みました。
(「しんぶん赤旗」2020年3月11日より転載)