東京電力福島第1原発事故から間もなく9年ですが、今年は関西電力が運転40年を超えた老朽原発の再稼働を狙っています。一方、今月17日には広島高裁が再び四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転停止の仮処分決定を出したことで、当面は伊方原発3号機の運転はできなくなりました。国民のたたかいが再稼働の行方を左右しています。(松沼環)
関電の発表では、再稼働に向け工事中の高浜原発(福井県高浜町)1、2号機は、それぞれ今年5月と来年1月に工事が完了する予定です。美浜原発(同県美浜町)3号機の工事も、今年7月に完了予定です。
しかし高浜原発は、警報を伴わない津波への対策を審査中です。原子力規制委員会はこの件で、高浜原発3、4号機の運転を停止する必要はないとする一方、安全性が確認されない状態で同原発全4基のうち3基以上の運転を認めないとしています。
関電の原発をめぐっては、関電の役員らが高浜町の元助役から金品を受領していた問題についての報告書が、今年度中に発表される予定です。
規制委は、昨年11月に東北電力女川原発2号機の審査書案をとりまとめ、近く設置変更許可を正式に決定する見通しです。東北電は女川原発の対策工事を今年、完了するとしていますが、再稼働には残された審査や地元合意など課題が残っています。
特重の設置遅れ
一方、規制委が昨年、航空機衝突などのテロ対策施設、特定重大事故等対処施設(特重)の猶予期限の延長を行わないと決めたことで、停止に追い込まれる原発もあります。
九州電力の川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は、特重の完成が期限までに間に合わない見通しです。九電は、1号機を3月16日、2号機を5月20日に停止し、それぞれ約9カ月と約8カ月の停止を予定しています。
関電の高浜原発3、4号機も8月3日と10月8日が特重の設置期限です。いずれも完成は間に合わず、長期の停止を余儀なくされる見通しで、四国電力伊方原発や関電の老朽原発3基は特重の設置期限が来年です。
各地で裁判今も
広島高裁が伊方原発3号機の運転を差し止めた仮処分決定を出しましたが、原発の差し止めや許可の取り消しを求めた裁判は各地で起きており、今後も司法判断によって原発が停止に追い込まれる可能性があります。
規制委の新規制基準適合性についての設置変更許可の審査は現在、9原発と日本原燃の六ケ所再処理工場などで継続されています。
原発問題住民運動全国連絡センターの伊東達也筆頭代表は、「規制委が再稼働を遮二無二進めようと、既に15基の原発に対して再稼働につながる許可を与えています。しかし、これまで再稼働に至ったのは9原発。国民世論が再稼働を止めているからです。新潟県の福島事故に関する検証委員会や日本原電が東海第2原発周辺の6市村に事前了解権を認めた協定など、福島事故以降、容易に再稼働を許さない状況が生まれています。こういった変化を広げ、住民運動を一層強めていきたい」と話しています。
(「しんぶん赤旗」2020年1月28日より転載)