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東電福島第1 原発事故から9年・・先見えぬ収束 排気筒解体に遅れ

 倒壊が心配される巨大な排気筒、増え続ける放射能汚染水や廃棄物、溶け落ちた核燃料デブリ…。多くの課題を抱えたまま、先の見えない事故収束作業が続く東京電力福島第1原発の現状はどうなっているのか。2011年の事故発生から9年を前に、合同取材に参加しました。(中村秀生)


(写真)解体作業が進む1、2号機排気筒。クレーンからつり下げられた切断装置が上部に設置されています。奥に見えるのが、無残な姿をさらす1号機原子炉建屋=1月17日、福島第1原発(写真はすべて代表撮影)

 キュン、キュン。巨大なクレーンからつり下げられ、排気筒の上部に設置された切断装置の音が聞こえます。

 高さ120メートルの1、2号機排気筒。事故発生後に多数の破断や変形が見つかり、倒壊の危険が指摘されていました。東電は昨年夏、ようやく上半分の解体作業に着手。しかしトラブルで作業中断を繰り返しています。200メートル離れたバスから遠隔操作する切断装置の不具合が発生し、12月には厳しい放射線環境のなか作業員が手作業で切断せざるを得ない事態も発生しました。

 現在、排気筒は上から約20メートルが切断され、高さ100メートルに。東電の広報担当者は「難しい作業で予定通りにいかない。期日を3月から5月に延ばしたが、一歩ずつ進んでいる」と説明します。

■遠隔操作で

 1~4号機を見渡せるこの高台から1号機まで約100メートル。放射線測定装置は毎時60・6マイクロシーベルトを示しました。25歩ほど近づいただけで数値は同128マイクロシーベルトに。取材メンバーの胸ポケットに入った線量計のアラーム音があちこちで鳴りました。

 3号機では、放射性物質の拡散を防ぐために設置したかまぼこ型のドーム屋根の下で、昨年4月に4年以上遅れて始まったプールからの核燃料取り出しが遠隔操作で進められています。外からも、むき出しになった鉄骨や変形した構造物が見えます。線量が高く、がれき撤去作業では放射線を遮へいする鉛のベストなどを着用しなければなりません。

 建屋周囲では黄色いヘルメットと全面マスクを装着した作業員が働いていました。原発構内の96%のエリアで一般服と使い捨て防じんマスクの軽装備で作業できるようになった現在も、作業員の3分の1ほどは厳しい放射線防護装備が必要な場所で働くといいます。

■タンク群が

(写真)4号機の近くにある「凍土壁」の配管。雪だるまのように膨らんだ氷が張りついていました

 原発構内にひしめく汚染水タンク群。漏えいの危険性が高いボルトで締めつけて組み立てるタイプの(フランジ型)タンクを解体・撤去した跡地で軽装備の作業員たちが新たな溶接型タンクを建設していました。クレーンを使って板を張り合わせた高さ10メートルのタンクがずらり。溶接・塗装作業を待っています。

 タンク991基にたまった汚染水の総量は約118万立方メートル(昨年12月12日現在)。現行のタンク増設計画では、2022年夏ごろに満杯になると東電は説明しています。処理設備で取り除けない高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水をどうするのかが、大問題になっています。

 敷地のあちこちを使い終えたタンクが占拠しているのも目につきます。東電は、敷地外に運び出せるレベルまで除染することは可能なものの、作業員の被ばくの問題や原発事故で使ったタンクを出していいのかという問題が残るといいます。

(写真)建設が進む溶接型タンク(画像の一部を加工しています)

 汚染水処理で高濃度のセシウムなどをこしとった、汚染水の放射能の“本体”ともいうべき吸着塔やコンクリート製の箱に収納された吸着材容器が、屋外に置かれていました。

 海岸べりでは、千島海溝沿いの超巨大地震による津波に備えるためL字形擁壁の設置が進められています。

 その近くにある廃棄物処理のための建屋はゆがみ、柱や配管がぐちゃぐちゃになって、さびついていました。まるで津波で時が止まったようでした。

 

 

(写真)津波の爪痕が生々しい、海側にある廃棄物処理のための建屋

 

 

 

 

 

 

 

(「しんぶん赤旗」2020年1月21日より転載)