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高浜原発4号 細管5本傷・・冷却困難の危険あった

高浜原発4号の蒸気発生器で見つかった傷の一つ(右側)。長さ約5ミリ、幅2ミリ以下のもの。左側に見えるのは管支持板(関西電力資料から)

専門家「徹底究明必要」

 定期検査中の関西電力高浜原発4号機(福井県)で10月、3台の蒸気発生器全てから細管の損傷が見つかっています。専門家から「審査で想定すらしていない事態に進展する危険性があった。徹底的な原因調査と対策が必要」と指摘する声が上がっています。(松沼環)

 蒸気発生器は、炉心で加熱された1次冷却水の熱で2次冷却水を沸騰させ、タービンを回す蒸気を発生させる装置。高浜原発のような加圧水型炉の格納容器内に設置され、細管内を高圧の1次冷却水が、外側を2次冷却水が流れる構造です。

 関電によると、A、B、Cと3台ある4号機の蒸気発生器の細管計9752本を検査した結果、A、Bから各1本、Cから3本、外側から損傷した細管が見つかりました。損傷の深さは、細管の肉厚約1・3ミリの約40~60%に及んでいます。

加圧水型原子炉概念図

 関電は、原因調査のため蒸気発生器の内部に小型カメラを入れ、損傷部を観察しました。それによると、外径約22ミリの細管に長さ約4~8ミリのいずれも円周方向の傷が確認されました。

 関電は今後、原因調査と再発防止を検討するとしており、4号機の営業運転の予定は当初の1月上旬から、2カ月程度遅れる見込みとしています。

 旧原子力安全委員会事務局の元技術参与・滝谷紘一氏は「約1年前の検査で損傷が見つからなかった所で大変に深い損傷が複数見つかったことに驚いています。原因は分かっていないといいますが、さらに深い損傷になれば、1次冷却水の圧力が高いので、細管破断の恐れがありました」と指摘します。

 原子力規制庁によれば、高浜原発の審査で、細管1本が破断した事故想定での対策を確認しています。しかし、複数本の細管の破断や複数の蒸気発生器で同時に細管が破断することなどを想定した評価はなされていません。

 

関西電力高浜原発。ドーム状屋根左は3号機、右は4号機=福井県高浜町

1991年に発生した関電美浜原発2号機の蒸気発生器細管破断事故では、日本で初めて原発事故で大量の水を注入する緊急用炉心冷却装置が作動しました。損傷した1本の細管から放射性物質を含む大量の1次冷却水が2次側へ流出し、原子炉が緊急停止するとともに、原子炉の圧力が低下するなどしたため緊急用炉心冷却装置が作動したのです。

 この時、問題の蒸気発生器からタービンにつながる配管の弁などを閉止し、損傷していない蒸気発生器で原子炉を冷却。2次冷却水に流入した放射性物質の一部は、環境中に放出されました。

 蒸気発生器細管の複数本が破損した場合どうなるのか。

 滝谷氏は「1次冷却水の流出に伴う放射能放出の抑制と炉心の冷却を続けることが大変難しくなります」といいます。「昨年も関電の高浜3号機の蒸気発生器細管で2次側からの傷が見つかっています。徹底した原因究明と再発防止をしなければ、再稼働すべきではありません」と話しています。

(「しんぶん赤旗」2019年11月20日より転載)