佐々木茂さん(65)は、「ふるさとを返せ!津島原発訴訟」(原告団員数669人。今野秀則原告団長)原告団の副団長です。福島県浪江町津島地区の住民が、国や東電を相手取り原状回復と損害の完全賠償などを求めています。
仲間は散り散り
浪江町津島に生まれ育ちました。東京の早稲田大学を卒業し、大手ゼネコンに勤務。その後「Uターン」して、2009年に母親と弟がやっていた漬物や梅、焼き餅の販売業を継ぎました。弟が病気で倒れたためです。
11年の東日本大震災・東京電力福島第1原発事故直後、浪江町は全町民が避難に追い込まれました。佐々木さんも避難を繰り返し、同郷の仲間たちは全国に散り散りとなりました。
佐々木さんは現在、福島県二本松市の復興住宅に住んでいます。「よもや原発事故が起こると思っていなかった。国も東電も、『原発は安全だ』という神話を私たちに植え付けてきた。私たちはそれを信じて生活をしてきた。津島訴訟では、絶対に勝つ」
国は将来にわたって居住を制限する帰還困難区域内で、除染を集中し居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」を認定しています。津島地区で認定されたのは153ヘクタール。地区面積のわずか1・6%です。
佐々木さんの自宅は、除染計画すら示されていません。「一日も早く除染をして平穏な生活に戻してほしい。私たちの地区は高濃度の放射性物質で汚染されているから、帰れるめどは立っていない。国、県は地区全体の工程表を作り、もう少し急いで除染作業に入るべきだ」と嘆きます。
エネ政策転換を
津島訴訟で、被告の国は裁判の長期化をもくろんでいると感じています。「私たちは、国に助けてほしいから国を訴えているのではない。責任を明確にさせたい。国も東電も謝ったことがない。賠償額は加害者の東電が算定している。こんなことはあってはならない」
佐々木さんは強調します。「日本は国民主権の国です。皆さんに福島の現状を見に来てほしい。被災地住民と対話をして、今の真実を見てほしい。国政のエネルギー政策の転換を図ってほしい」
(菅野尚夫)
(「しんぶん赤旗」2019年11月10日より転載)