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原発事故避難 台風でまた・・胸まで水 死を覚悟

「住まいの確保急いで」と訴える西さん

福島・いわき市

 大型で強い台風19号は、福島県いわき市の住宅街を襲いました。市内を流れる夏井川は12日夜、氾濫。流域の住宅地では深いところで2メートルほどにまで浸水しました。台風の被災者のなかには、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で避難せざるをえなかった人たちもいます。福島県大熊町から、いわき市に避難してきた西一枝さん(66)もその一人です。(菅野尚夫)

 西さんが浸水に気付いたのは13日午前2時過ぎでした。「チャポ」「チャポ」と水音がして起きました。

 自宅はアパートの1階です。水量が急激に上昇。畳が浮き出し、ベッドの上にのがれました。窓から「助けて~」と、声を上げるもののむなしく、暗闇からは反応はありません。「110番」してもつながらず。2階に住む人に救助を頼もうと下から天井をつついたものの、何の反応もありません。

 水は胸まで迫ってきました。「もう助からない」と、死を覚悟しました。必死で「助けて!」と叫びました。2階の住民が叫び声に気がつき助けてくれました。

 夏井川は複数箇所で決壊していました。「九死に一生を得た」と振り返ります。

 西さんは、福島県浪江町の出身で、結婚して大熊町に住んでいました。8年半前の震災と福島原発事故で大熊町は全町避難に。西さんらは三春町、会津若松市など各地を転々としました。ようやく、いわき市に落ち着いた時に襲った水害でした。

 いわき市によると、浸水の被害は、平下平窪、平鯨岡、平幕ノ内の地域に集中しています。

 西さんが住む下平窪では、86歳と91歳、100歳の女性が、自宅1階で死亡しているのが見つかったと報道されました。死因はいずれも水死。西さんにとっては「ひとごと」ではありませんでした。「もし逃げ遅れていたら…」

 気象庁によると、いわき市平地区は12日朝からの12時間降雨量が観測史上最大タイの222ミリを記録。夏井川の決壊で、西さんらが住んでいた地区は一気に水没したとみられます。この地区には防災無線がなく、市からの避難情報が、住民にうまく伝わらなかった可能性があります。

 西さんは現在、避難所で過ごしています。「県営住宅か災害公営住宅に移りたい」として、こう訴えます。

 「原発事故という人災と、史上まれにみる大雨というダブル災害に遭遇しました。踏んだり蹴ったりの人生です。一人では生きられません。たくさんの友だちに助けられました。行政には『住まいを確保して』とお願いしたい」

(「しんぶん赤旗」2019年10月28日より転載)