台風・豪雨災害が続き、大規模停電が被害を広げました。地産地消のエネルギーは災害対策として、どのように役立つのでしょうか。千葉県睦沢(むつざわ)町の道の駅の事例と、東京都江戸川区のNPOの取り組みから見えてきたのは…。
(手島陽子)
台風15号(9月9日)による千葉県の大規模停電のとき、温泉を無料開放してテレビで話題になった道の駅「むつざわ つどいの郷」。温泉は睦沢町の「むつざわスマートウェルネスタウン拠点形成事業」の一環です。
拠点協定を結ぶ
災害時に、温泉を利用した人はおよそ1000人(人口約7000人)。同施設は、災害時の拠点となる協定を町と結んでいました。9月1日のオープン間もなく、それが活用されたのです。
同町に住むまゆみさん(40)は4人家族。大規模停電1日目は妊娠中の大きなおなかでかがみながら、ふろにためた水をたらいに移し、お湯と混ぜて3歳の息子の体を流しました。「わが家は水をためていたし、ガスでお湯を沸かせた。断水した家は大変だったと思います」。2日目、家族4人で温泉を利用。「あの日はとても暑かった。息子は皮膚が弱く、15分の制限はありましたけど、シャワーで汗を流せてとても助かりました」
道の駅は、九十九里浜から内陸へ8キロほどのところにあります。津波や水害のリスクが低いことから、近隣自治体の2次避難所(家屋を失った被災者向け)と、「災害時の後方支援」の役割を果たすため、防災広場を設け、防災食などを備蓄しています。
電力は、太陽光発電と町内で発生する天然ガスで70~80%を賄います。ガス発電と廃熱利用を組み合わせたコージェネレーションシステム(熱電併給)を採用。地下水をガス発電の廃熱と太陽熱温水器で温めて、施設内の温泉施設に供給しています。(図)
町の変革に貢献
3年前に、町が資本金の56%を出資して、電力会社「CHIBAむつざわエナジー」を設立。「エネルギーの地産地消により、地域内での省エネルギーや災害時の電力確保など、エネルギーを有効活用する町への変革に貢献します」とうたいます。太陽光発電による電力を、8事業者・38施設、91世帯に供給しています。
同町まちづくり課の鈴木政信課長は「ガスが地元産で安いので、電気代を安くしても黒字です」といいます。利益は公園への運動器具設置などの形で町に還元しています。
台風15号被害で、町内でも長期間の停電が起きました。東京電力の情報が不正確だったため、役所に抗議電話が殺到しました。「CHIBAむつざわエナジー」との契約世帯の中にも一部停電がありましたが、5~6時間後に自力で復旧したといいます。
「スマートウェルネスタウン」事業は、人口急減に歯止めをかける狙いもあります。庭と駐車場がついた1戸建ての町営住宅は、家賃が5~6万円。徒歩1分の道の駅では、産直野菜や新鮮な魚介類が買えます。タウン内は電線が地下化しており、鈴木さんは「電柱の倒壊で停電することはありません」といいます。
町民の太陽光発電の設置を支援する制度も。住宅用の太陽光発電設備を設置するための補助金は、1キロワット当たり4万円、総額の上限は18万円です。
会と党町議要望
日本共産党町議の市原時夫さんは、「平和といのちを考える会」の人々とともに2011年以降、太陽光や木質などエネルギーの地産地消に取り組むべきだと、何度も要望してきました。
「スポーツ観光優先」の睦沢町政に懸念を示しつつも、「3・11以降、大きな価値観の変化が起きた。千葉県は、風向きが少し違っていたら、原発の影響がもっと深刻だったという危機感は根強い。そのことが地産地消エネルギーへの転換という町の姿勢につながったのではないでしょうか」と市原さん。「地産地消エネルギーは、地熱、水力、海の近くならば風力や波力など、地域の特性に合わせてどこでもできる。自治体が本気になることがカギなのです」
(「しんぶん赤旗」2019年11月9日より転載)