「判決をこのまま確定させることは、著しく正義に反する」。検察官役の指定弁護士が、福島第1原発事故をめぐり、東京電力旧経営陣3人を無罪とした東京地裁判決を不服として控訴しました▼地裁の判決で驚かされたのが、「当時の社会通念」を持ち出し、「(原発の)絶対的安全性の確保までを前提としていなかった」からと、元会長や元副社長の責任を免罪したこと。事故があっても許容しろとでも言うかのようです。「到底納得できない」との指定弁護士の指摘は当然です▼「当時の社会通念」といえば、国や電力会社などの「原子力ムラ」が「原発の重大事故は起きない」と「安全神話」を振りまいていたことと無縁ではありません。そのなかで、原発推進へ巨額の不透明なカネの流れが指摘されていました▼その闇の一端が明るみに。関西電力の会長や社長ら20人が、福井県高浜町の元助役から現金、小判、金貨、スーツの仕立券など約3億2千万円相当を受け取っていた問題。一人で1億円を超える金品を受け取っていた役員も。電気料金を原資とする工事費の一部が経営陣らに還流していたのではないかという疑惑▼同町は高浜原発1~4号機がある原発城下町。今は再稼働のための工事が目白押しです。原発関連工事を請け負う地元企業と元助役の関係は相当深く、関電もそれを承知していました▼「原発マネー」の闇は関電以外でも指摘されています。この闇が「社会通念」醸成の一役も買っていたのではないか。徹底解明が必要です。
(「しんぶん赤旗」年10月3日より転載)