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原発マネー還流疑惑深まる・・関電金品受領 再稼働へ もたれ合い

※氏名公表は20人のうち12人、金額はいずれも換算合計

「元助役は どう喝的人物」と強調

 「(高浜町元助役は)どう喝的な人物」「金品を返したくても返せなかった」。2日の記者会見で、関西電力の岩根茂樹社長はこう繰り返しました。他方で関電は、元助役に工事の重要情報を提供しつつ、元助役が関係する地元企業に多額の発注をしていました。原発再稼働に向けた関電と元助役のもたれ合いの構図が鮮明になり、「原発マネー還流」の疑惑がいっそう深まりました。(「原発」取材班)

関電と森山元助役をめぐる動き

群を抜く 関係企業への便宜

 「(金品を)返却したかったが、『無礼者』などと激高された」「『娘がかわいくないのか?』とすごまれた」―。2日の会見で公表された、金品受領問題に関する関電内部の報告書は、森山氏をそう描きました。“特異な人物”で怖かったというのです。

 ところが関電は刑事告訴など毅然(きぜん)とした対応をしないばかりか、群を抜いて便宜をはかっていました。

 森山氏から面談要請があった場合、担当者は工事の担当部門から工事量や概算額を算出させ、資料や関係データを同氏に提供。森山氏が関電幹部に金品を渡した際、再々同席していた地元の建設会社「吉田開発」が関電から多額の事業を受注するようになります。

 同社は金沢国税局の税務調査で、森山氏に3億円の資金を提供していたとされています。会見では関電から同社に2014~18年の5年間に計約64億円もの工事が出ていたことが明らかになりました。

 吉田開発への発注額が適切だったのか―。会見ではこの点の質問が相次ぎました。

 岩根社長は「森山氏からの金品の見返りとして、工事発注で特別扱いをしたことはない」と強調。「発注額もプロセスも適正だった」と従来の立場を改めて示しました。

 しかし会見資料の一つ、「吉田開発への発注案件リスト」の金額などはすべて黒塗り。「適切」という判断の根拠は示されませんでした。

 7年間で約3・2億円に上る森山氏から関電経営陣への金品提供が、「原発マネー」の還流ではないかとの指摘も続きました。

 これに対し関電側は「金品の出所についてはまったく承知していない」(八木誠会長)、「考え及ばない」(岩根社長)などと繰り返しました。

 記者団から「これだけの金品提供の原資について、長い間誰も疑問を持たなかったのか」と重ねて問われると、同社幹部が「金品の出所については分からず、それについて詰めて考えたことはなかった」と報告書の記述を読み上げるのみ。原発マネー還流の有無は、解明すべき大きな課題として残りました。

関西電力高浜原発1、2号機=福井県高浜町

「機嫌を損ねるとリスク」

 11年3月11日の東京電力福島第1原発事故後、原発に反対する国民世論は急速に強まりました。そんな中で、なぜ関電と森山氏の癒着関係が続いたのか―。

 福島原発事故をきっかけに、関電の原発が順次停止し、経営は急速に悪化しました。

 ある電力会社の元幹部は「関電は特に原発の割合が高かった」といいます。事故前年の10年度は発電実績で原発は44%を占めていました。それが14年には関電の全原発が停止。15年3月期連結決算では4年連続の赤字となりました。同年6月には電気料金を値上げします。

 苦境を乗り切るため、関電にとって原発再稼働が喫緊の課題となりました。原子力規制委員会の新規制基準に基づき各原発で大規模な安全対策工事を実施。龍谷大学の大島堅一教授によると、高浜原発1~4号機の追加的安全対策費は計5456億円です。関電の調査報告書は、工事が増えるなかで「森山氏への対応の頻度は多くなっていた」と指摘しています。

 会見で八木会長は「(森山氏が)地域全体の取りまとめ役で、彼の機嫌を損ねて原発事業に反対の立場に立たれると地域全体が反対に回るリスクがあると考えた」と釈明。原発事業を推進するために森山氏との不適切な関係を続けたことを、認めた形です。

 原発再稼働のために森山氏を頼った―そんな構図が浮かび上がってきます。

(「しんぶん赤旗」年10月3日より転載)