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巨大地震どう備える?・・東京大学地震研究所教授 平田直さん

東京大学地震研究所教授 平田 直さん

地域知り生きのびる力を 被害を最小限にするために

 いつ起こっても不思議ではない巨大地震。私たちはどう向き合えばいいかを常に問い直す必要があります。東京大学地震研究所教授の平田直(なおし)さんが8月末に行った講演「地震学の到達と巨大地震への備え」(主催・革新都政をつくる会、東京災害対策連絡会)から紹介します。(武田祐一)

 今年6月18日には山形県沖の地震がありました。地震の大きさ「規模」を表すマグニチュード(M)は6・7で、重傷者9人、軽傷者34人。家屋の半壊と一部損壊は合計1281棟という被害でした。(2019年7月31日現在)

 昨年9月6日の北海道胆振東部地震もM6・7でしたが、広範囲に土砂崩れが発生して死者は44人にのぼり、発電所の被災等で北海道全域が停電したことは記憶に新しいのではないでしょうか。

 同年6月18日の大阪府北部の地震はM6・1。都市部での地震で、全壊は21棟、半壊・一部損壊が6万1749棟(19年4月1日現在)。死者は6人で、小学生が学校プールのブロック塀の下敷きになりました。

 昨年1年間に日本とその周辺で起きた規模M6以上の地震は15回。毎月約1回起きている勘定です。M6の地震は、過去96年間では年間平均19回に上り、日本中どこでも起こりえます。

 災害科学では「地震」と「震災」を区別しています。「地震」は自然現象で、「震災」は地震によって人が受ける災害であり、社会・経済現象です。

 私たちは自然現象としての地震を制御することはできませんが、適切に備えれば、被害を減らすことはできます。

発生時期の予知は困難

 これまで地震予知をめざして研究してきましたが、現状では、地震が起きる可能性が高まったとはいえるものの、地震の発生時期を正確に予知することは困難です。

「地震ハザードステーション」(J-SHIS)の「全国地震動予測地図」。画面は、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を地図上に示したものです。自分の住んでいる地域を調べてみましょう。地震の起きやすさや揺れやすい場所なのかを知ることができます。

 しかし、M7の首都圏の地震やM8~9の南海トラフの巨大地震といった「大地震が起きない理由は何もない」ということは現在の知識でも確かです。

 南海トラフ全域でM8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率は70~80%もあります。東日本大震災以上の被害が想定されています。(表)

 首都直下地震が起きると、中央防災会議によれば、震度6弱以上になる地域は、1都3県の約3割に及びます。多くの木造建物が壊れ、火事が複数箇所で同時に発生。延焼は2日間続き、死者2万3000人、負傷者12万3000人に上ると推定されます。死者のうち半数以上は火災で亡くなる可能性が高くなっています。

 広範に断水し、下水道が使用できなくなります。5割程度停電し、電力の復活に1週間以上かかります。電話は不通に。主要道路の開通は1~2日かかり、一般道は交通マヒ。地下鉄は1週間、運行停止し、JR・私鉄は1カ月くらい動かない可能性があります。帰宅困難者は1700万人に上ると推定されます。

事前対策が防災の基本

 防災の基本は事前対策です。お金は多少かかりますが、建物の耐震化・不燃化をします。圧死を免れるため、室内の家具は固定して転倒を防ぎます。寝室には、本棚など家具を置かないことが望ましいです。やむを得ず家具がある場合でも、家具の方に頭を向けないで寝るようにしましょう。

 事業所でも家具の固定は必須です。交通網がマヒして帰宅困難になるため、最低でも3日間から1週間分の水や食料を従業員の分を備蓄し、さらに従業員の人数より10%多く予備の物資を備蓄することが必要です。

 防災で大事なことは、正しい基本知識を学び、災害から生きのびる力を身につけることです。

 たとえば、海辺で1分以上の強い揺れがあった場合は、津波が来ると考え、すぐに高台に避難する―。災害時に、いつ、どこに避難するかを一人ひとりが判断することが求められます。

 自分が住んでいる地域の自然や社会の環境を知り、災害の危険性を理解することや、災害の歴史から教訓を学ぶことが大切です。

(「しんぶん赤旗」2019年9月11日より転載)