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福島に生きる 「ふくしまエネルギー塾」取締役 谷藤允彦さん(77)・・再生エネ 地場産業に

太陽光発電建設に取り組む谷藤さん

 谷藤允彦(たにふじ・よしひこ)さん(77)は、福島県須賀川市で太陽光発電など再生可能エネルギーを供給する株式会社「ふくしまエネルギー塾」の取締役です。

 太陽光の買い取り価格は1キロワット時あたり14円(2019年度)。「採算が合いません。16円にならないとだめです」といいます。

 東京電力福島第1原発の事故後、再生可能エネルギーに転換しなければいけないという声が高まりました。太陽光や風力発電、水力発電、バイオマス発電などが注目されています。

 谷藤さんは、太陽光発電とともにバイオマスに期待を寄せています。バイオマスは、家畜排せつ物、稲ワラ、林地間伐材など、国内の農山漁村に存在するバイオマス資源を利活用する発電です。

 農山漁村の自然循環環境機能を守り、その持続的発展が可能な「農業国福島県に適した発電」です。

 「原発事故から8年6カ月が過ぎて、再生可能エネルギーへの転換について県民の関心が下火になったのではないか」と心配する谷藤さん。「須賀川モデルとして全国に発信し続けたい」と意気込んでいます。

■「地質の道」50年

 谷藤さんは秋田県に生まれ、東北大学理学部で地質学を学びました。卒業後は福島県に移住。地質を調査する会社で働いています。「この道50年」になります。

 そんな谷藤さんは「大地震や津波など自然災害の危機が差し迫っているという認識に2011年当時いたっていなかった」と反省します。「(原発事故の)危険性に向き合っていなかった。もう少し努力すれば具体的に危険性が分かり警鐘を鳴らせた」と悔しがります。

 「東日本大震災と福島原発事故で目の置きどころが変わった」とも。「それまでは会社や業界団体を通して社会を見てきましたが、事故後は全体のことを考えて発想して、人間の視点で考えるようになりました」

■発電所の建設へ

  「反省はするが後悔はしない。失敗から学ぶこと」がモットー。福島県須賀川市に「再生可能エネルギーを地場産業として造りたい」と「共同発電所の建設」を進めています。

 「声をかけると共感してくれて参加者が増えています。経済的にも自立できる市民運動として取り組む。楽しく夢が広がります」

 株主は現在16人。社債を発行し、銀行からの借り入れなどで建設しました。

 出資者の一人、堂脇和秀さんは「原発ゼロを街頭でも訴えてきた中で『再生可能エネルギーだけでやれるのか』と言う声が聞こえます。これが私たちの答えです」と、胸を張っています。

 (菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2019年9月11日より転載)