帰還 一日も早く・・地裁支部 原発津島訴訟 住民が陳述
東京電力福島第1原発事故で、避難を強いられている福島県浪江町津島地区の住民約500人が、国や東電に原状回復と損害賠償などを求めた津島原発訴訟の第20回口頭弁論が7月11日、福島地裁郡山支部(佐々木健二裁判長)で開かれ、原告の今野幸四郎さん(82)、武藤茂さん(70)にたいする本人尋問が行われました。
今野さんは津島地区で5代目になる酪農家。「2頭から始めた乳牛は、東京電力福島第1原発事故前は260頭になっていました。人間が逃げるのに精いっぱいで、殺処分するほかなく、そのときの(牛たちとの別れを思うと)今も涙がこぼれます。牛たちの古里も奪われました」と陳述しました。
「まったく先は見えません。朝は、避難先の本宮市からわが家の方向を見て手を合わせています。津島の自然豊かな風景を夢に見ます。一日も早く自由にわが家に帰れるようにしてほしい」と、望郷の思いを訴えました。
武藤さんは大工をしながら農業を営む兼業農家。「農業をしながら自給自足を夢見ていましたがかなえられません。自分で設計施工した自宅は、(高い放射線で)恐怖を感じます」と、8年が過ぎても戻れない実態を証言しました。
被ばく訴訟 双方控訴 福島原発
東京電力福島第1原子力発電所で事故直後の2011年3月に緊急作業に従事した男性作業員(53)が、不適切な指示で高線量の被ばくを余儀なくされたとして東電などに損害賠償を求めた訴訟で、原告と被告の双方が一審判決(6月26日)を不服として仙台高裁に控訴していたことが11日、分かりました。
一審判決は、退避の基準となる警報付きのポケット線量計の警報音が鳴るなかで作業継続を余儀なくされた不安、恐怖など原告が被った精神的苦痛を認め、東電に33万円の賠償を命じました。
原告側は9日に控訴。東電と関電工など関連会社が連帯して110万円を支払うよう一審判決の変更を求めています。
東電は10日に「判決内容を総合的に判断して控訴した」(東電広報担当)としています。
(「しんぶん赤旗」2019年7月12日より転載)