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被ばく 東電に賠償命令・・福島地裁支部 元原発作業員が勝訴

原発作業員への支払いを命じる勝利判決を伝える弁護団=6月26日、福島地裁いわき支部

 東京電力福島第1原子力発電所で事故直後の2011年3月24日に緊急作業をした男性作業員(53)が、現場での不適切な指示で高線量の被ばくを余儀なくされたとして、東電と子会社の関電工、下請け会社に合計1100万円の損害賠償を求めた裁判で、福島地裁いわき支部(名島亨卓裁判長)は6月26日、東電に33万円の支払いを命じました。

 訴状によると、原告は、緊急作業で3号機タービン建屋の地下1階で電源盤にケーブルを敷設する際に、最大で10・816ミリシーベルトの外部被ばくと、5・8ミリシーベルトの内部被ばくを受けました。

 この被ばく量は、労災認定での白血病との因果関係を認める基準(5ミリシーベルト)を超える数字です。それへの強い不安や恐怖感を抱えた生活を強いられたとして安全配慮義務違反、使用者責任による損害賠償を主張してきました。

 判決は、退避の基準となる警報付きポケット線量計(APD)の警報音が鳴るなかで、作業継続を余儀なくされた不安、恐怖など原告が被った精神的苦痛は、法的利益の侵害と認められるとしました。

 東電や関電工などの安全配慮義務違反、使用者責任は認めませんでした。

 原告の作業員は、「賠償額の大小はある。しかし一介の作業員が巨大な東電に正面から挑んだ結果、不安や恐怖を覚える労働環境にとどまらせたことの損害を認めさせた。福島原発事故の被ばく労働者に対する初めての判決として受け止めたい」と評価しました。

解説

初判決 全国の訴訟に影響

 「あそこは戦場だよ」。原告の元作業員の男性が、今回の訴訟の現場となった緊急作業について当時、本紙の取材に答えた言葉でした。

 男性は、証人尋問でもこう証言しています。

 「(湯気が立っていることを確認)本当にとんでもないところに来ちゃった。後悔しかなかったです」

 本来、原発構内での作業には放射線量を計測するなどの安全確認が原則。しかし緊急作業では高濃度の放射性物質を含む水たまりが存在する可能性が秘匿され、現場で別の東電チームが空間線量を計測したところ400ミリシーベルトに。同チームは直ちに退避しましたが、原告らのチームにはなにも知らされず作業継続命令で続行させられました。

 裁判で原告側の指摘に被告の東電、関電工は「被った程度の被ばくには(作業員は)同意していた」などと口裏合わせの主張を繰り返しました。

 判決はこの東電などの主張を退け、原告が被ったAPDが鳴り続く、不安と恐怖を覚えた精神的苦痛を重視し、そうした労働環境で働かせた東電らの責任を問いました。

 弁護団は判決の意義をこう強調します。

 「福島原発事故による被ばく労働者についての初めての判決です。今後の原発作業員に対する安全管理にとどまらず、全国の30カ所の裁判所、1万2000人の原告による原発事故の損害賠償訴訟にも影響を与えるものとなる」

 (山本眞直)

(「しんぶん赤旗」2019年6月27日より転載)