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原発推進 石炭温存 政府案 世界の流れに逆行・・「パリ協定」に基づく長期戦略

 

石炭を燃料にした常陸那珂火力発電所=茨城県東海村

政府は4月23日、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」に基づいて策定する長期戦略案を示しました。原発を「安定的に進めていく」として、再稼働など原発推進を鮮明にしています。

 パリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前から2度未満にし、努力目標として上昇を1・5度に抑えることを明記。今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目指しています。各国は2020年までに長期戦略を国連に提出する必要があります。

将来にわたり

 政府案は、今月2日にまとめられた政府の有識者懇談会の提言を受けたものです。提言では原子力について「技術的選択肢」の一つに挙げ、「原子力の活用についての議論が必要」と述べていました。

 しかし政府案では、「原子力の利用を安定的に進めていく」と明記。原発と石炭を重要なベースロード電源と位置づけた安倍政権のエネルギー基本計画に基づき、再稼働などの課題に責任ある取り組みを進めていくと原発推進の姿勢を改めて示しました。

 さらに50年に向けても、低出力の小型炉などの技術開発を掲げ、原発を将来にわたっても使い続けようとしています。

今世紀後半?

 一方、二酸化炭素の排出量が多い石炭火力は世界各国で時期を決めて廃止がめざされています。しかし、政府案は「依存度を可能な限り引き下げる」というだけで、いつ全廃するかも示さず、海外輸出支援も見直さないまま、CCS(二酸化炭素回収・貯蔵)開発を口実に温存・延命をはかっています。

 昨年10月に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1・5度特別報告書」は、気候変動の深刻な影響を回避するには、「2度未満」では不十分で、「1・5度未満」をめざす必要があると強調。50年の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする必要や、30年には10年比で約45%削減が求められることを明らかにしています。

 「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現していく」という政府案は、そうした緊急性から程遠いといえます。

(「しんぶん赤旗」2019年4月25日より転載)