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再稼働も新設も運転延長も 原発固執 経団連・・エネルギー提言発表 安全より「むら」の利益

 経団連は今月、電力政策に関する提言を発表しました。高コストになっている原子力について、脱炭素化をめざしていくうえで「必須の電源」「不可欠のエネルギー源」などと位置づけ、原発再稼働の取り組みの強化や原発の新増設、最長60年を超えての運転期間延長を求めています。東京電力福島第1原発事故の反省など一切ありません。専門家は「無責任でお粗末」と批判しています。

 (「原発」取材班)

 経団連のエネルギーに関する提言は2017年11月以来。目立つのは、福島原発事故から8年経過するなかで、原発の再稼働が思惑通り進んでいない状況を繰り返し述べていることです。

 ―「再稼働に時間を要し、電力投資の原資を圧迫している」

 ―「再稼働の時期がずれ込むほど、厳しい判断を迫られる」

 ここにあるのは電力会社の都合だけです。ひとたび事故を起こせば甚大で長期的な被害をもたらす原発の危険を目の当たりにした国民の不安などは度外視しています。

政府に迫る

 提言はまた、安倍政権が昨年閣議決定したエネルギー基本計画が、2030年度の電源構成で原子力比率の目標を20~22%としていることに対し、これ以上の廃炉が進めば「達成も困難」と再稼働をあおっています。

 政府に対して、原子力の継続的活用のメッセージを明確に発信する必要があると要求。再稼働への取り組みをいっそう強化することや、リプレース(建て替え)・新増設を政策に位置づけるべきだと迫っています。

 その上で提言は「投資収益性の改善につながる」などとして長期間の運転などの要求を具体的に盛り込みました。

 まず再稼働に関して原子力規制委員会に「規制の合理化」「審査の迅速化」を求めています。より危険な老朽原発を酷使する運転延長問題にも踏み込みました。現在は原則40年で、例外として1回に限り最長20年の延長を認めています。提言は、米国では原発の運転期間を80年間まで延長する申請が行われているとして、もっと長く期間を延ばすための検討を求めています。

 さらに福島原発事故からの8年が運転期間40年の2割に相当するなどとして、停止期間を運転期間から差し引き運転期間を事実上延長することを新たに求めました。安全よりもうけ優先の露骨な要求を並べたものです。

 提言には、将来にわたっても原子力依存をねらい、日立なども開発に乗り出している低出力の小型炉などの技術開発推進を掲げています。

世論を無視

 提言発表の会見に臨んだのは中西宏明経団連会長。福島第1原発の建設にもかかわった原発メーカー、日立製作所の会長でもあります。日立は1月、英国での原発建設計画を「凍結」したばかり。これによって安倍政権が進めた原発輸出がすべて失敗し、原発がビジネスとしても成り立たないことを示しました。

 そういう当事者でありながら、中西氏は原発の再稼働について「どんどんやるべきだと思う」と無責任な発言をしてきました。

 提言の会見で中西氏は「皆さま方が受け入れるんだったら(温暖化対策には)原発の比率を相当高めるのが一番現実的だ」などと述べました。原発回帰の主張を国民に押しつけようとしています。

 提言が発表された同じころ、電力会社やメーカーなどでつくる日本原子力産業協会は年次大会を開き、今井敬会長(経団連名誉会長)が再稼働していない原発の早期稼働と運転期間延長議論、新増設など、経団連の提言と同様の要求を訴えていました。原産協会は「あつまれ!げんしりょくむら」を名乗るサイトを開設したものの、「無神経すぎる」と批判されホームページから削除したばかり。国民世論を無視した暴走ぶりが共通しています。

安全神話無反省無責任でお粗末

核・エネルギー問題情報センター事務局長・元中央大学教授 舘野淳さん

 原子力に関していえば、安全だという前提で経済最優先でその拡大を図ろうとしており、国民の合意が得られるような説得力はありません。原発を動かせばさらに増える高レベル放射性廃棄物などの答えがないまま再稼働してほしいと、勝手なことばかり主張しています。

 たとえば迅速な再稼働が必要だからと、原子力規制委員会に対し、規制の合理化や審査の迅速化に取り組めなどと求めています。しかし、再稼働させようとしているのは軽水炉です。軽水炉は冷却できなくなると短時間で炉心溶融に至る欠陥商品であり、規制委の審査は欠陥商品を何とか使うため産業界に甘いものです。提言はそれも審査期間が長すぎるなどと文句を言っています。さらに産業界に甘い審査になっていくなら、国民の信頼は失われ、再び事故を起こしかねません。経営にとっても大きなリスクになります。こうした方向が彼らにとって長い目で利益になるのか、疑問です。

 福島原発事故に至るまで経済界が「原子力は安全だ」として推進してきた反省のかけらもありません。そもそも国内の原発は米国の未完成の技術を導入したものです。安全性も自分たちで確かめる必要があったのに米国の技術を過信し、批判に耳を貸さずにきたのです。それが事故につながっています。提言が電力会社やメーカー経営者の責任に一切触れていないのは無責任で、あまりにお粗末です。

(「しんぶん赤旗」2019年4月26日より転載)