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東日本大震災・福島原発事故8年 被災地から(5)・・家賃が一挙に5倍!? 災害公営住宅

 被災者が入居する災害公営住宅で、一定の所得がある世帯(収入超過者)の家賃負担が問題になっています。東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センターの金田基(もとる)事務所長、遠州尋美事務局次長(元大阪経済大学教授)に聞きました。

 災害公営住宅について特別な法律はなく、公営住宅法の特例として国が補助金を割り増しして対応しています。被災者の一部世帯が公営住宅の入居基準を超える収入があるとして、割増家賃を課せられ、結果的に退去を迫られるのが「収入超過者」問題です。

竜頭蛇尾と批判

 東日本大震災の被災者が災害公営住宅に入居する際、所得制限はありません。しかし、公営住宅法に基づき総収入から日常生活に不可欠な経費を差し引いた「政令月収」が入居収入基準(多くの自治体では15万8千円)を超す世帯は「収入超過者」とされます。この場合、入居4年目から家賃が段階的に上がり、6年目をめどに同じ住宅を民間業者が貸すときにもうけのでる家賃に引き上げられます。「竜頭蛇尾と言うほかない」(河北新報)という批判もでています。災害公営住宅ができて6年目にきていますから焦眉の問題だといえます。

 実際に、2017年度は1万9300円だった家賃が18年度に9万9400円と、一挙に約5倍に上がった事例(仙台市荒井東市営住宅)も出ています。「収入超過者」の中で、収入が低いほど値上げ幅が大きくなる逆進性もあります。災害による損失を所得から控除できる制度が終了したことも影響しています。大震災により住まい、財産を失った被災者の現状を直視すべきです。

家族向けが0.8%

 18年3月にインターネットで2万2千件を超す入居募集中の賃貸住宅を調べましたが、災害公営住宅なみの家賃で入居できる家族向け住宅は0・8%しかありませんでした。しかも、交通不便な老朽住宅が大半です。住宅の自力再建といっても、いったんそれを断念して災害公営住宅に入居したわけです。

 復興庁は17年11月に、条例により入居基準を緩和し、家賃減免も可能とする事務連絡を岩手、宮城、福島の3県に出しました。宮城県内の「収入超過者」は1116世帯、全体の約8%です。災害公営住宅のある21自治体のうち、11の市町が何らかの独自救済策を行っています。国は財政支援措置を続けていくべきです。

 「収入超過者」は比較的若く、定職を持ちコミュニティー維持の担い手にもなる人たちです。災害公営住宅の家賃では低所得者層の減免継続の署名を集め、成果を得てきました。「収入超過者」問題解決は、住まいの復興ができるかどうかの試金石だと考えます。

 (つづく)

(「しんぶん赤旗」2019年3月13日より転載)