市街地の大部分が津波被害を受けた岩手県陸前高田市。大規模な土地のかさ上げ工事が進み、市民が少しずつ商売を再開しています。人が集まる街にしたい―。移転先やかさ上げした土地で必死に生業(なりわい)を取り戻そうとする姿があります。
ぷりぷりのメバルの塩焼きにフキノトウのてんぷら、つやつやの新米。魚介は大船渡と気仙沼、野菜とコメは市内で調達し、新鮮な食材で盛りだくさんの夕食を出すのは「民宿沼田屋」です。菅原ひとみさん(41)と夫の真樹さん(46)が切り盛りします。
借金返済が大変
曲松(まがりまつ)地区で真樹さんの両親が営んでいましたが被災し、同市米崎町に移転、再開しました。再建するときはグループ補助金で、国・県から資金の4分の3の補助を受け取ることができましたが、自己負担分と設備の追加で4000万円の借金があります。
「15年がかりの返済が今年の夏から始まります。今からドキドキです」とひとみさん。すでに返済を始めている同業者は「返すのが大変」と漏らすといいます。「返済の不安はありますが、みんな同じなので頑張って返します。今は復興に携わる建設作業員が宿泊するのでやっていけますが、なくなった後の集客を考えないといけない」と話します。
海岸の防潮堤のそばで、コンビニエンスストアを再開した熊谷幸重さん(69)は「以前はアルバイトを雇っていましたが今は家族3人でやっています。売り上げは毎年1割ずつ減り、客数は震災前の半分です」と話しました。
岩手県を訪れた観光客は、震災が起きた翌年度(2011年度)に観光客数が446万人(前年度比24万人減)に落ち込んだものの、復興需要などで12年度には540万人を超えました。ところがその後は年々減り続け、17年度には11年度を下回っています。
主力産業の漁業と水産加工業で見ると、県は被災した漁業者を支援し、漁船と漁具の再整備は完了に近づいています。ところが近年不漁が続き、県内の水揚げ量が震災前の16万トンから10万トンまで減っています。水産加工業も不漁と労働力不足で苦境に立っています。
市は県立の津波伝承館と一体で道の駅を整備し、野球場やサッカー場を建設するなど、観光客やスポーツイベントの誘致を期待しています。担当者は「かさ上げした地域の土地所有者が投資に踏み切れるよう活気を取り戻したい」と説明しました。
地元雇用守って
日本共産党陸前高田市議団は市に対し、地域再生へ、「雇用を支えている地元企業が力を出せるよう支援し、地元に残りたい子どもが地元企業に就職できるようさらに応援してほしい」と求めています。
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2019年3月12日より転載)