東京電力が福島県富岡町に昨年開設した廃炉資料館を見る機会がありました。印刷物に「事故を起こさないための反省と教訓を社内外に伝承する」と記しています。
福島第1原発事故を振り返る2階フロアの照明はスポットライトだけで暗い。「反省と教訓」のコーナーではこんなナレーションと映像が流れていました。「津波に対する検討の機会はあった」といい、政府機関が2002年7月に公表した地震予測を挙げていました。
東日本大震災が起きた三陸沖から房総沖にかけて、大きな津波をもたらす地震が発生する恐れがあるという調査結果です。ナレーションは続きます。予測に基づいて福島第1原発に敷地を大きく超える津波が襲うという計算をしたが、その信頼性について専門機関に依頼して検討中に3・11になったと。
東電の元幹部を被告とする刑事裁判で、東電側が津波対策を先送りした言い訳と同じ内容です。しかし、裁判で明らかになったのは、複数の東電社員が政府機関の地震予測を取り入れて津波対策の必要があると認識し、幹部にも進言していたことです。
一方、驚かされたのが、原発の安全確保に最終的に責任を持つ立場にある元最高幹部の証言です。敷地を超える津波が来るという人がいると会議の場で耳にしながら、「(津波に)問題意識はなかった」と言い放っていたからです。もちろん、これらの話はナレーションに一切出てきません。
事故を起こした責任を不問にしたい東電。その刑事裁判は来週にも結審です。
(「しんぶん赤旗」2019年3月7日より転載。見だし=山本雅彦)