中央防災会議試算
政府の中央防災会議は12月19日、首都直下地震の被害想定を公表しました。今後30年間に70%の確率で発生する南関東でのマグニチュード(M)7級の地震のうち、東京23区南部を震源とする「都心南部直下地震」では、最悪のケースで埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3県で2万3000人が死亡すると試算しました。都心部を中心に多くの地域が震度6強以上の揺れに見舞われ、経済被害額は95兆円に及ぶとしています。
詳細な被害分析は、主に都心南部直下地震を想定して行いました。最大の被害が発生するのは、冬の午後6時ごろに毎秒8メートルの風が吹いている場合。揺れにより建物17万5000棟が全壊。空気が乾燥し、夕飯などの調理で出火しやすい状況な上、風で延焼する影響で41万2000棟が焼失します。建物倒壊で6400人、火災で1万6000人が死亡。12万3000人が負傷します。倒壊による死者数は、自宅で就寝している人が多い冬の深夜に起こるケースが最大で1万1000人。
発生直後には23区の約5割で停電、断水となるほか、1日後には電話が固定、携帯ともに1都3県で利用者の半数が使用できなくなります。鉄道は地下鉄が1週間、JRや私鉄は1カ月程度運休します。茨城も含めた1都4県で800万人の帰宅困難者が発生。避難者は2週間後に最大720万人に上ります。
都心では、国会議員や中央省庁の職員が被災することで、一時的に国家運営機能が低下。経済的には、多くの企業が本社機能を喪失し、道路などの物流機能が寸断されます。建物倒壊などを含めた直接被害が47兆円、生産・サービス低下などの被害が地震後の1年間で48兆円に達するとしています。
同会議は、M7級の地震として東京都立川市直下型や横浜市直下型なども想定。都心南部直下地震以外にも「どこで発生するかは分からない」として、あらゆるケースを見込んだ首都圏全域での対策の必要性を訴えました。
また、100年先には発生の恐れが高まるとして、関東大震災と同じ相模湾から房総半島が震源域のM8クラスの「大正関東型地震」が起こった場合の被害推計も参考として示しました。
最悪のケースとして、火災で3万7000人、建物倒壊で3万人、津波で1万1000人が死亡すると推計しました。