政府の中央防災会議は12月19日、首都直下地震の被害想定を公表しました。同会議の首都直下地震モデル検討会(会長・阿部勝征東京大名誉教授)は、内陸直下型のマグニチュード(M)7級と関東大震災のような海溝型M8級の計26通りの地震を検討し、中央官庁や企業の本社への影響が最も大きい都心南部直下地震を被害想定対象に選びました。
どのタイプの地震が起きても広い地域が震度6弱以上の揺れに見舞われ、震源の真上や地盤の弱い所では6強や7となる見込みです。海溝型の場合は千葉県や神奈川県などの沿岸に高さ10メートル超の津波が押し寄せる恐れがあります。荒川河口に近い江東、江戸川、墨田、葛飾各区の海抜0メートル地帯では堤防や水門が壊れ、長く浸水する恐れがあります。
直下型地震は地震発生を知らせる気象庁の緊急地震速報が揺れに間に合わず、津波は5~10分程度で到達するため、普段からの備えが大事です。
検討会によると、海溝型の地震が起きる前にM7級地震が複数回起きていることから、当面はM7級地震が「切迫性が高い」と判断しました。どこで発生するか分からない直下型を都心南部、東部、西部のほか、千葉市や川崎市など12通りを想定。立川断層帯などの活断層やプレート境界型を7通り想定しました。
一方、大正関東地震タイプは中長期的な防災・減災対策の対象としました。
しかし、東北沖の日本海溝沿いで東日本大震災が起き、震源域に隣接する茨城・干葉両県沖では近い将来に大地震が誘発される恐れが指摘されています。1677年には延宝房総沖地震が起きて両県沿岸に大津波が押し寄せており、別途対策が必要となります。
エレベーター閉じ込め1万7千人
首都直下地震の被害想定は、停止したエレベーターに最大約1万7000人が閉じ込められると予測しました。
全国のエレベーターのうち、一定の揺れを感知すると自動的に最寄りの階に停止して、扉を開ける「地震時管制運転装置」の設置率は約6割。政府の中央防災会議によると、東日本大震災では都内で少なくとも84件の閉じ込めが発生し、救出までに9時間以上かかるケースもありました。
日本エレベーター協会の調査では、東京都内のエレベーターは約15万基。不動産調査会社の東京カンテイによると、都内の高層マンション(20階建て以上)は2000年が73棟でしたが、13年11月末現在で308棟に上ります。建物の高
層化や住民の高齢化により、エレベーターヘの依存度も高まっています。
エレベーターの保守管理会社大手の三菱電機ビルテクノサービスは、関東地方と山梨、新潟、長野各県で計9万3000基のエレベーターを管理します。復旧や修理できる作業員は約1900人で、震災時には他地域から応援をもらうことになるといいます。
東京都千代田区など、マンション管理組合の申請を受け、エレベーター内に飲料水や毛布を備え、簡易トイレとしても使える非常用ボックスを提供する動きも出ています。