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行き詰まる原発・・原発ゼロ法案 実現今こそ

東電が全基廃炉を表明した福島第2原発(本紙チャーター機から撮影)

輸出、核燃サイクル、事故処理、次々破たん

 福島第1原発事故から7年10カ月。事故収束の見通しも立たず、福島の被災地では地方行政の存続の危機さえ懸念されています。一方、原発再稼働など安倍政権の原発推進路線は、さまざまな面で破たんに陥っています。日本共産党など野党4党が昨年、衆院に共同提案した「原発ゼロ法案」の実現がいよいよ求められています。

 安倍政権は昨年7月、原発を「重要なベースロード電源」に位置付け、2030年度の電源構成で原発を20~22%にすることに「全力を挙げる」と明記した「エネルギー基本計画」を決定しました。その上、50年に向けた戦略でも原発を「脱炭素化の選択肢」と位置づけ原発固執の姿勢を鮮明にしました。現在の原発比率は約2%(『エネルギー白書2018』)で、「20~22%」は、これを10倍にし、老朽原発をはじめすべての原発を動かそうとするものです。

 昨年は、老朽化した被災原発の日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)が、原子力規制委員会の審査に“合格”しました。規制委は、これまで申請された3原発4基の運転期間の延長申請をすべて認可しており、原発の運転期間を「原則40年」としたルールが形骸化されています。

世論が東電動かす

 しかし、原発に固執するこうした政府方針は、矛盾や破たんをきたしています。

 安倍政権が「成長戦略」に位置付け、首相自らトップセールスした原発輸出は、福島原発事故を受けた原発の高コストなどによって、イギリス、トルコ、リトアニア、ベトナムなどどれも行き詰まっています。

 政府の核燃料サイクル政策もいっそう破たんが明らかになっています。この政策によって、原爆の材料にもなるプルトニウムは日本の国内外に約47トン(長崎型原爆6000発以上)もたまっています。海外から疑念も招きかねない事態に、内閣府の原子力委員会は昨年、これ以上プルトニウムを増やさないとする方針を発表。しかし、プルトニウムを利用するとしていた高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉となり、大幅に減らす見通しも全くありません。

 世論は依然、再稼働反対が多数です。昨年2月の世論調査では、原発再稼働に反対が61%、賛成は27%(「朝日」)です。

 昨年6月、東京電力の小早川智明社長は福島第2原発全4基の廃炉方針を初めて明言しました。県議会と県内59市町村議会が全基廃炉を求めるなど福島県内原発ゼロを求めた県内世論が追い込んだ成果です。

 東海第2原発の地元、茨城県でも県内の4分の3を超える市町村議会で再稼働に反対する決議や意見書を採択。さらに、安全協定に基づく再稼働の事前了解権を持つ那珂市長を含む11人の首長が反対を表明しています。“合格”したからといって再稼働の見通しは立っていません。

 また、昨年は東北電力女川原発1号機が廃炉となり、国内ではこれまでに23基の商業用原発が廃炉、または廃炉決定・検討中です。(図)

太陽光抑制策の壁

 日本のエネルギー政策は原子力依存から再生可能エネルギーの飛躍的普及への転換を図るべきです。それを阻んでいるのが原発優先策です。九州電力は昨秋、玄海と川内の両原発の計4基を稼働させる一方、太陽光発電などの出力制御を実施しました。「原発ゼロ」の決断が急がれます。

 昨年3月、日本共産党、立憲民主党、自由党、社民党の4党が、全原発の速やかな停止・廃炉を掲げた「原発ゼロ基本法案」を衆院に共同提出しました。

 法案は、原発ゼロを政治の意思として決断することを明確にした画期的な内容であり、2030年までに電力供給量に占める再生可能エネルギーの割合を4割以上にする目標を盛り込んでいます。

 原発ゼロの実現に向けて、法案の豊かな内容を力に、統一地方選挙と参院選挙で、原発ゼロを争点にしていく取り組みが求められます。

再エネ転換へ 選挙で意思を

安斎育郎さん 立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長

日本原電の東海第2原発(本紙チャーター機から撮影)

 東京電力福島第1原発は、事故の後始末の見通しが立っていないという状況です。いまだ事故原発の実態すらよくわかっていない状態で、原子力規制委員会が合格といえば、原発を再稼働させるという安倍政権の原発依存政策は常軌を逸しています。

 福島第1原発事故では、原子炉の底を突き破って格納容器の底まで溶け落ちた核燃料は原子炉の構造物やコンクリートなどと反応して複雑な混合物・化合物、デブリを作っています。どうやって取り出すのか、現在技術的な見通しがありません。

 労働者の被ばくも懸念されます。1979年に起きた米国のスリーマイル島原発事故では事故後約10年で溶融燃料の取り出しまで終えたのですが、その時の作業者全体の被ばくよりも、福島第1原発で働いている人の被ばくはすでに20倍以上に達しています。

 事故原発の廃炉の見通しもつかないことが、故郷を追い出された人々が、戻るかどうかという時に深刻な心の問題になっています。いつまた、なにが起こるかという不安です。

 福島第1原発周辺の「帰還困難区域」は放射線のレベルが非常に高くて、一部を除いて除染もされていませんから、このままでは今後数十年、住民は戻れそうもない状況です。

 私は被災者の被ばくをできるだけ少なくするための取り組み「福島プロジェクト」を発足させ、福島に56回通っています。

 しかし、事故の影響は放射線の影響だけでなく、その社会的影響に世紀単位で向き合わなくてはいけない状況で、極めて深刻なことが起こったという思いを深くしています。

 太陽光とか風力など、輸入しなくていいエネルギー源が日本には豊富にあります。エネルギー政策の転換でそれを選び取ることが必須です。

 福島第1原発事故がもたらしたものをもう一度きちんと見直すべきです。2019年は統一地方選挙と参院選挙がある年です。主権者が意思を表明する重要な機会です。

 野党が共同で「原発ゼロ法案」を提案していますが、これをぜひ実現してほしい。それによって国民がこの問題に注目していることを示さなくてはいけないと思います。

(「しんぶん赤旗」2019年1月8日より転載)