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海洋放出の風評 懸念・・福島原発汚染水フォーラム開く

 東京電力福島第1原発事故によって増え続ける放射能汚染水の取り扱いや、福島県の農林漁業の現状を考えるフォーラムがこのほど、東京都文京区の東京大学で開かれました。高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水について、国民の理解が進んでおらず議論の前提が不十分との指摘や、海洋放出されるのではないかと風評被害を懸念する声が上がりました。

 東大の関谷直也准教授は、福島、宮城、茨城、東京、大阪の5都府県の計1500人を対象にした汚染水についての調査を報告しました。

 同原発の敷地内に放射性物質を含む「処理水」が保管されていることについて、福島県では8割近くが知っていると回答したのに対し、他の3都県は6割前後、大阪府は4割にとどまりました。トリチウムという言葉を「知っている」が福島県で7割だったものの、福島県以外では4割程度でした。また、トリチウムは分離技術がないなど詳細な問いには、福島県でも知っている人が少ない傾向が出ました。

 関谷氏は、トリチウムを含む汚染水の処分方法を国の小委員会で議論しているものの、トリチウムについて国民が分からないまま議論が進んでしまっていると指摘。「福島県の漁業の現状と、トリチウム水がどういう経緯で出てきたのか理解するのが重要だ」として、「処分方法を議論する前提が十分ではない」と主張しました。

 水産研究・教育機構中央水産研究所の森田貴己氏は、「漁業者はトリチウム水の危険性よりも風評被害を懸念している」と指摘。「風評被害の発生が少ない処分方法という視点が大事。今、本当に処分方法を決めるタイミングなのかも検討すべきだ」と述べ、タンクの敷地確保や汚染水の発生量抑制が必要だと訴えました。

 相馬双葉漁協の渡部祐次郎参事は、試験操業について説明。「水揚げ後、魚種ごとに放射性物質濃度の検査を行った上で業者へ引き渡している」と紹介しました。

(「しんぶん赤旗」2018年12月23日より転載)