【ベルリン=伊藤寿庸】地球温暖化対策のパリ協定の「実施ルール」策定を目指す国連の気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が12月2日からポーランド・カトウィツェで開かれます。世界各地で、ハリケーンや台風、豪雨、干ばつ、猛暑、山火事などの気候災害が相次ぐ中で、温室効果ガスの排出削減や被害緩和の対策、途上国支援などをめぐって議論が行われます。
2015年に採択されたパリ協定は、世界の平均気温を産業革命前に比べて2度未満に抑え、さらに1・5度未満に向けて努力することを目標にしています。各国の削減目標を足しても、この目標には届かないことが明らかとなっており、パリ協定の実施に向けたルール作りや国別目標の引き上げが議論の焦点となっています。
11月27日に発表された国連環境計画(UNEP)の報告は、昨年のCO2排出が過去最高だったと明らかにしました。今世紀中の気温上昇を2度あるいは1・5度未満に抑えるためには、2030年までに昨年比25~55%の排出削減が必要で、現行の取り組みの3倍化、5倍化が必要だと警告しました。
すでにトランプ政権は、パリ協定の離脱を表明し、化石燃料利用を続けながら「温暖化対策」をするなどと主張。世界第2位の温暖化ガス排出国としての責任放棄として国内外から批判が強まっています。日本政府も、石炭火力の建設・輸出など化石燃料への依存と、国際的にみても低い削減目標が、市民社会から批判を受けています。
米国の逆行姿勢の中で国際的により大きな役割を果たしていく意向を明らかにしている欧州連合(EU)は11月28日、50年までの実質「排出ゼロ」を目指す気候戦略を発表。エネルギー節約、再生可能エネルギー、交通運輸での排出削減の取り組みを強めるとしています。
(しんぶん「赤旗」2018年12月2日より転載)
温暖化 背を向けるな・・豪中高生1・5万人授業拒否
オーストラリア全土で11月30日、温暖化対策の「パリ協定」の約束履行に背を向ける保守連合政権に抗議し、1万5千人の中学・高校生らが授業をボイコットしました。政府は「気候変動で行動するのではなく、教室で勉強を」(モリソン首相)などと呼びかけましたが、最大都市シドニーでは制服姿の生徒、親や教師ら5000人が集結。「私たちの未来がかかっている」などと書かれたプラカードを手に、政府に対策を迫りました。
(鎌塚由美)
「校則違反」脅しに負けず 親・教師も連帯
現地からの報道によると、生徒らによる抗議は、六つの全ての州都と20カ所の地方都市で取り組まれました。シドニー中心部の集会では、生徒代表の1人が、「今日は始まりにすぎない。対策が取られるまで私たちはさらに取り組みを続ける」と訴え、参加者が歓声でこたえました。モリソン首相が、生徒の抗議を支持しないと表明したことについて、生徒の1人は「首相が、仕事を適切にしていたら、私たちはここに集まる必要はなかった」と表明。教員や保護者も一緒に、「モリソン首相は退陣を」と唱和しました。
生徒らの行動は、スウェーデンの15歳の生徒が毎週、国会前で政府にパリ協定の約束履行を求めて行動していることに触発されたもの。メルボルン近郊に住む中学生のグループが地元の連邦議員の事務所前で抗議を始め、同日の全国の行動を呼びかけていました。
授業ボイコットについては、ニューサウスウェールズ州が「授業に出席しなければ、欠席とみなされ、校則違反にもなりうる」(教育局報道官)と警告したほか、カナバン資源相は、「授業ボイコットで抗議しても、そこからは何も学べない。将来、どうやって失業者の列に並ぶかを学ぶのが関の山だ」などと発言し、教師や保護者からも反発を招きました。
9歳の息子を連れてシドニーの行動に参加したマリアさんは、ロイター通信に、「自分たちの生活に直接影響する問題にどう関与し、行動するかを子どもたちが学ぶ、良い機会だ」と語りました。
8歳の子どもとその友達を連れてメルボルンの行動に参加したトレントさんは、ABCラジオに、「子どもたちは学校で気候変動を学び、科学への理解を深めている。子どもたちが科学を理解しているのに、なぜ国会議員は理解していないのか」と憤りました。
オーストラリアは、石炭火力発電への依存度が高く、人口1人当たりの二酸化炭素の排出量が最も多い国の一つです。保守連合政権のもとで温室効果ガス削減の取り組みの遅れが指摘されています。
(しんぶん「赤旗」2018年12月2日より転載)