日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > COP24 温暖化進む世界と日本の課題(下)・・WWFジャパン気候変動・エネルギーグループ長 山岸尚之さん

COP24 温暖化進む世界と日本の課題(下)・・WWFジャパン気候変動・エネルギーグループ長 山岸尚之さん

WWFジャパン気候変動・エネルギーグループ長 山岸尚之さん

国は再生エネ優先を

 今年のCOPでは、パリ協定の細かい実施ルールについて各国が合意する予定になっています。非常に難しい問題で、最終日までもつれると思いますが、何らかの形で妥協が図られて合意がされるでしょう。

パリ協定の行方は

 強硬な意見を言っているインドや中国、あるいは産油国のサウジアラビアなども、今回合意ができないのは本意ではありません。

 中国やインドも温暖化の影響を受けて自国でさまざまな被害が発生しています。中国は風力発電が大きく伸びているし、インドでは太陽光が伸びている。被害とビジネス両方の面で、対策に取り組む理由があります。

 どうせやるのなら、歴史的責任のある先進国を巻き込んだ枠組みである方が望ましい。その時に、現状全世界が参加しているパリ協定以上の土台はない。これが頓挫することは、今のところどの国も望んでいないのです。

 一昔前は、長期的な傾向である温暖化を、単一の年のできごとと結びつけるのは難しいとされていました。

 しかし近年、科学の発達で“温暖化がなければ何%の確率でこの事象が発生したか”という研究がされるようになり、やはり近年の異常気象に温暖化が影響を与えているのは確かだろうというのが、科学界でも共通認識となりつつあります。

異常気象との関連

 世界気象機関(WMO)も、今年の夏の世界的な異常気象と温暖化を結びつけた声明を出していて、2018年が歴史上最も平均気温が高かった夏の一つだとしています。

 基本的に、世界の平均気温が上がると異常高温が増えます。海水温が上昇すると海から蒸発する水量が増える。それが雨となると降雨量が増える、単純化すればそういうことです。台風のエネルギーは蒸発した水が上昇する時のエネルギーなので、台風も強力になります。この間、米・カリフォルニアで大火災が起きましたが、異常な高温と乾燥による火災も、温暖化の影響の一つとしてあります。

 台風が強力になる、異常高温の頻度が高くなるというのは日本の研究機関も予測しています。これから国や自治体が災害対策をする際は、温暖化が起きた場合の影響を加味しないと、もはや無責任と言えるでしょう。

 気候変動に比較的対応できると思われていた日本でも、今夏200人超が亡くなる豪雨災害が発生しました。島しょ国などの人たちが温暖化で受ける被害と、日本の被害を単純に比べるのは難しいですが、言えるのは日本も無傷ではいられないということです。日本だから大丈夫だというのは甘すぎる考えではないでしょうか。

 日本も大きな影響を被る温暖化に対して、CO2排出量削減などを十分にやるということは日本政府の責任になってくるし、さらに企業の責任にもなってきます。

石炭火力から撤退

 政府のエネルギー基本計画でも、再生可能エネルギーの主力化の文言などがあります。経産省の資料で脱・炭素化という言葉が入ってくること自体、時代は変わったと感じます。ただエネルギー構成などの数字が変わっていないので、現状維持ということを企業や自治体は受け取ってしまったのではないでしょうか。

 石炭火力からの撤退などを政策として出し、再生可能エネルギー目標をもっと引き上げるべきです。

 再生可能エネルギーが伸びている国は、そちらを優先して使う仕組みができています。日本ではいまだ、そうした仕組みになっていないので伸びにくい。典型的な例が電力会社による再生可能エネルギーの接続制限です。やはり、そこは国の政策が求められます。(おわり)

(「しんぶん赤旗」2018年11月28日より転載)