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COP24 温暖化進む世界と日本の課題(上)・・地球環境市民会議専務理事 早川光俊さん

早川光俊CASA専務理事

 記録的猛暑や豪雨に見舞われた今年。気候変動対策をめぐる国連会議、COP24(国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議)が12月2日から14日までポーランド南部のカトヴィツェで開かれます。温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の具体的なルールがついに合意される予定です。日本のNGOとして会議に参加する地球環境市民会議(CASA)の早川光俊専務理事(弁護士)と、世界自然保護基金(WWF)ジャパンの山岸尚之気候変動・エネルギーグループ長に、COP24の特徴や課題について聞きました。(岡本あゆ)

災害、背景に気候変動

 今年は西日本豪雨で200人を超える死者がでました。気象庁も、豪雨の背景には「地球温暖化に伴う気温の上昇と水蒸気量の増加」があるとしています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、地球温暖化により、確実に異常気象が増えると警告しています。

 もちろん堤防のかさ上げなどの災害対策は必要です。ただ気候変動が一定のレベルに達すると、対応の限界を超えてしまいます。

 また温暖化の影響は決して平等ではありません。日本は防潮堤を造れるかもしれませんが、貧しい途上国にそんなことはできない。二酸化炭素(CO2)排出量を減らし、温暖化の進行を緩やかにする方が、よほど安く済むし公平です。

上昇を1.5度以下へ

 パリ協定は、世界の平均気温上昇を2度未満に抑えるという目標を掲げ、そのためにはCO2を含む温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにする必要があるとしています。全ての国が削減目標を持ち、対策を行うことに合意しました。

COP23の会場前で石炭火力に抗議する市民=2017年11月、ドイツ・ボン

 今回はパリ協定の運用ルールの合意を目指す重要な会議です。

 もう一つの注目点は削減目標引き上げです。現在の各国の削減目標では、「2度目標」は達成できません。そのためパリ協定は、5年ごとに新しい削減目標を出す仕組みを設けています。2020年に、各国が目標を提出することになっていますが、目標をもっと引き上げようという機運を今回のCOPでつくる必要があります。

 島しょ国や後発開発途上国は、2・0度でも深刻な影響がでてしまうとして、1・5度以下を求めています。

 IPCCが先月まとめた特別報告によれば、1・5度以下の場合、2・0度に比べて、豪雨や熱波などの異常気象は確実に少なくなります。海面上昇も10センチ程度低くなり、影響を被る人が約1千万人減る。私たちNGOとしては、もう1・5度を目指すしかないだろうという見解です。

 2・0度目標の場合、今世紀後半までにCO2排出量をゼロにする必要がありますが、1・5度の場合2050年までにゼロ。かなり早めなければなりません。各国が削減目標を引き上げることが求められます。とりわけ、世界有数の温室効果ガスの排出国でありながら、目標が低い日本は目標を大幅に引き上げる必要があります。

逆行する日本政府

 今夏に閣議決定された政府の第5次エネルギー基本計画は、15年にパリ協定の合意があったにもかかわらず、14年の第4次計画とエネルギー構成を変えていません。特に30年度の石炭火力の割合を26%に据え置くなどの石炭火力推進は、世界から大きな非難を浴びています。

 前回のCOP23で浴びた批判は日本の産業界にも効いています。丸紅が石炭火力から撤退を表明するなど、少しずつ変化は生まれています。

 パリ協定の合意後、世界では大きな変化が生まれています。「ダイベストメント(化石燃料事業からの投資撤退)」などがすごい勢いで進んでいます。

 バンク・オブ・アメリカやEU最大の銀行のBNPパリバなど、運用資産総額で約686兆円、約1000機関が化石燃料からの投資撤退を表明しています。資金がなければ石炭火力発電所も建設できません。こうした企業は環境重視というより、成長が見込めない化石燃料産業は、いい投資先でないという判断をしています。そこが、日本の産業界が理解していない点です。

 (つづく)

(「しんぶん赤旗」2018年11月27日より転載)