原発報道を風化させぬ・・河野 慎二(ジャーナリスト)
原子力規制委員会は11月7日、今月28日に運転開始から40年となる日本原子力発電(原電)東海第二原発(茨城県東海村)について、20年の運転延長を認可した。
東海第二原発は出力110万キロワット。30キロ圏内の住民は96万人。人口密集地帯に立地する巨大老朽原発だ。
東海第二は3・11東日本大震災で被災し、重大事故寸前の危機に見舞われた。被災原発の運転延長認可は初めてだ。
テレビは、このニュースをどう報道したか。
各局とも、規制委の認可決定を型通り伝えただけで、原発報道の“風化”を実感させられる貧弱な報道だった。
その中で目を惹(ひ)いたのが、NNNドキュメント’18「再稼働させるのか“東海第二”…首都圏の巨大老朽原発」(日本テレビ、11月12日)である。
番組は「老朽原発の再稼働で万が一事故が起きたら、どんな危険があるのか」を探る。まず、放射性物質拡散の危険。北東の風に乗って放射性物質が埼玉、東京、神奈川等に広がるのは必至だ。
次に、複合災害の危険だ。東海第二から3キロ先に使用済み核燃料の再処理工場がある。人が近づけば1分で死ぬほどの高濃度の放射性物質が出る。複合災害が起きれば汚染はさらに拡大する。
三つ目の危険は、避難の問題。取材班は原発から6キロのひたちなか市に住む住民の協力を得て、避難テストを試みた。車での避難が困難を極めることを実体験する。
5キロ圏内には障害者施設がある。放射能除去シェルターを設置しているが、理事長は「(シェルターを)稼働させてはいけない。最後は天然記念物にする」と語る。
再稼働同意が必要な那珂市の海野徹市長が「危険を承知で動かすという神経が理解できない」と再稼働反対を明言。
番組は、首都圏の巨大老朽原発再稼働が限りなく無理筋に近い現実を明らかにする。
しかし、原電の和智信隆副社長は「再稼働するかどうか決めていない」としながら「防潮堤等の工事は進める」と再稼働に含みを持たせている。
経済産業省幹部も「国は原電を潰(つぶ)さないということですよ」と、番組の取材に答えている。
テレビは原発報道をおろそかにしてはならない。
(こうの・しんじ ジャーナリスト)
福島第1で汚染水漏えい・・約230リットル
(11月22日)東京電力福島第1原発の地下貯水槽付近で高濃度の放射能汚染水が漏れているのが見つかりました。
東電によると、漏えいした場所は地下貯水槽(NO1)上部の移送ポンプ付近で、ポンプを停止したことにより漏えいは止まりました。汚染水は5×4メートルの範囲の地面に染み込みました。漏えい量は約230リットル。全ベータ(ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質)が1リットル当たり7万3000ベクレル含まれていました。
東電は漏えいの原因について、移送ポンプの排水設備のふたが外れていたことだと推定しています。
(「しんぶん赤旗」2018年11月26日より転載)