原子力規制委員会は、運転開始から40年を迎える日本原子力発電(日本原電)の東海第2原発(茨城県東海村)について最長20年の運転期間の延長を認可しました。2011年の東京電力福島第1原発事故後の法改定で、運転期間は原則40年とされたのに、そのルールをないがしろにする規制委の姿勢は重大です。周辺住民や自治体は不信と批判を強めています。「老朽原発」の再稼働を推進することは許されません。
延長申請100%合格
原子炉等規制法は、12年の改定で原発の運転期間を原則40年としました。もともと原発自体が未完成の技術で、ひとたび事故を起こせば未曽有の事態を招くことは、福島第1原発事故が7年半を過ぎても収束の見通しがたたないことからも明らかです。
ましてや40年もたつ「老朽原発」では、原子炉などの劣化は避けられず、危険はいっそう高まります。だからこそ40年を超える運転については規制委が認めれば1回に限り最長20年としたものの、これは「例外中の例外」(当時の原発担当相)としたはずでした。
ところが規制委は、関西電力高浜1、2号機、美浜3号機の3基(いずれも福井県)の40年超の原発の再稼働を次々と認めてきました。今回の東海第2を認可したことで、延長の申請が出された「老朽原発」の運転を100%認めたことになります。ルールを形骸化させ「例外」を「原則」にした規制委の責任がきびしく問われます。福島原発事故への深刻な反省を忘れ去ったという他ありません。
しかも、東海第2原発は東日本大震災の被災原発です。外部電源が喪失し、津波の影響で非常用ディーゼル発電機の一部が使えなくなり、あわや大事故になるところでした。原子炉が福島第1原発と同じ「沸騰水型」という点も、強く懸念されています。
東海第2は運転開始から40年になる今月27日までに延長の認可がでなければ廃炉になるところでした。規制委はそれに間に合わせるかのように、新規制基準で求められているケーブル(電線の集合体)の難燃化も一部にとどまる対策でよしとするなど、審査を急ぎました。「延長ありき」では規制委は役割を果たせません。
安倍晋三政権は7月に閣議決定したエネルギー基本計画で、原発を「ベースロード電源」と位置づけ、2030年度には原発の電源構成に占める比率を「20~22%」にするとしています。これを実現するためには、東海第2を含む老朽原発を動かすことが大前提となっているのです。再稼働を推進するエネ計画は撤回し、原発ゼロ、再生可能エネルギー拡大への転換がいよいよ求められます。
地元の声を無視するな
東海第2原発の周囲で避難計画を義務づけられた30キロ圏の14市町村には約96万人が居住しています。日本原電は立地する茨城県と東海村のほか、水戸市を含む5市と再稼働についての「実質的な事前了解」を認める協定を3月に結びました。その一つ、那珂市の市長は再稼働反対を表明しています。また6市村の首長と日本原電側との会合では、自治体が再稼働の拒否ができないかのように発言した原電幹部に対する怒りが上がりました。地元の声を無視した危険な再稼働は断念すべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年11月11日より転載)