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いぶき2号世界初の試み・・「人為起源」CO2排出推定

観測中のいぶき2号の想像図(JAXA提供)

 10月29日に打ち上げられた日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」。全地球の地域ごとに、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス濃度を測定し、各国の排出量の推定に役立てます。

 いぶき2号は、CO2とメタンの観測精度を初代「いぶき」より1けた向上させるとともに、新たに一酸化炭素を観測対象として追加しました。CO2は、人間活動だけでなく森林や生物活動でも排出されます。化石燃料の燃焼時などに発生する一酸化炭素と組み合わせて観測・解析することで、工場など「人為起源」のCO2の排出量を推定します。これは世界初の試みです。

 雲やエアロゾル(大気中に浮遊する微粒子)を観測し、呼吸器系などへの悪影響が指摘される微小粒子状物質(PM2・5)の濃度推定もめざします。

 H2A40号機には、アラブ首長国連邦から打ち上げを受注した観測衛星「ハリーファサット」、日本の大学などが開発した小型衛星4機も搭載されました。

解説

排出削減へ政策転換は急務

 宇宙空間から地球の温室効果ガスの濃度を精密に測定する「いぶき2号」。世界に誇る日本の技術で温暖化の監視に貢献することが期待されます。しかし監視だけでは温暖化を抑制できません。日本政府は、温室効果ガスの排出削減に後ろ向きの姿勢を改めることが急がれます。

 温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」は、各国の取り組みで世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2度を大きく下回る(努力目標は1・5度)よう保ち、今世紀後半には温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標で合意。12月の国連会議で協定の運用ルールを決める予定です。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今月、特別報告書を公表。すでに約1度上昇し、このまま進めば2030~52年に1・5度に達する可能性が高いと指摘しました。1・5度上昇でも悪影響は避けられず、2度の上昇ならさらに深刻になると警告しています。

 温暖化を1・5度に抑えるには各国の対策強化が必要ですが、とりわけ日本政府は、低すぎると指摘される排出削減目標を引き上げることが求められます。CO2排出量が多い石炭火力発電の推進など温暖化対策に逆行する姿勢を改め、再生可能エネルギーへの本格的転換が重要です。

 日本で相次ぐ大災害の背景には地球温暖化があるといわれています。気象庁は、今夏の日本での記録的な高温の要因の一つに「地球温暖化に伴う全球的な気温の上昇傾向」をあげたほか、7月の西日本豪雨についても「地球温暖化に伴う水蒸気量の増加の寄与もあったと考えられる」と指摘しています。

 (中村秀生)

(「しんぶん赤旗」2018年10月30日より転載)