東京電力福島第1原発事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第33回公判が10月30日、東京地裁(永渕健一裁判長)で開かれ、事故当時、経営の最高責任者だった勝俣恒久・元会長(78)の被告人質問がありました。
勝俣被告は2002年10月から社長を、08年6月から福島第1原発事故後の12年まで会長を務めました。検察官役の指定弁護士から、最終的に原発の安全確保の義務と責任を負っているのではと問われ、勝俣被告は、安全の責任について「一義的に原子力・立地本部で行う」と述べ、自らの責任はなかったと主張。最終的な義務と責任を重ねて問われると「分かりません。社長は万能ではありません」としました。
元東電幹部の調書では、08年2月に社長だった勝俣被告らが出席した「中越沖地震対応打ち合わせ」(通称「御前会議」)で、想定を超える津波になることや津波対策が必要だとする方針が報告され了承されたとしています。これについて、勝俣被告は「そういう説明はなかった。勘違いじゃないかと思う」と全面的に否定。その時に「津波への確実な対応」とする配布資料が示されると、「見たことがない」と述べました。
また、09年2月に会長だった勝俣被告等が出席した御前会議で、元部長が福島原発について「もっと大きな14メートル程度の津波がくる可能性があるという人もいて」と発言したことに対し、「(聞いたことが)あります」と証言。しかし、「福島原発の津波問題で疑問を持つことがなかったのか」と問われ、「社長にゆだねた方がいいと考えた」と述べました。
被害者の代理人の弁護士も質問。国の機関が02年に公表した地震予測「長期評価」に基づき津波対策を実施していれば、事故は防げたという反省はないのかと追及すると、「長期評価」について公判の証人によって意見が分かれているとして、「(それをもとに)企業行動をとることはあり得ません」と述べました。
公判では、検察官役の指定弁護士が求めていた福島第1原発や避難中の患者ら44人が死亡した病院などの現場検証の要請に対し、永渕健一裁判長は却下しました。
次回公判は11月14日で、患者らの遺族が意見陳述します。
(「しんぶん赤旗」2018年10月31日より転載)