「とことん調べて、責任の所在を明らかにしてほしい」。関西電力美浜原発3号機の蒸気噴出事故で、破れた配管から突然噴き出した高温高圧の蒸気を浴びて死傷した作業員十一人の遺族は四日、祈るような思いで県警の強制捜査を見守りました。
亡くなった五人の中で最年少の高鳥裕也さん(29)は、高校時代はラグビーの全国大会にも出場したスポーツマンでした。父実さん(60)は「息子の結婚や孫の顔を見ることができなくなったのは悔しくてたまらない」と、今も無念の思いです。
事故後、県に強く求められるまで稼働中の他の原発を止めて点検しようとしなかった関電の対応に触れ、「ごう慢で謙虚さがない」と怒りを隠しません。
「やるべきことをやっていれば、事故は防げた。関電は捜査に協力して、正直に非を認めてもらいたい」と強い口調で語りました。
死傷した十一人は全員、検査会社「木内計測」(大阪市天王寺区)若狭支社の社員で、美浜3号機の定期検査を控えた準備作業中に被災しました。関電が定期検査のコスト削減のため、運転停止前に現場に作業員を入れ、検査期間の短縮化を進めていたことが大事故につながったとの指摘もあります。
自身も同じ職場で働いている遺族の男性(33)は、「肉親を含め同僚五人を失ったショックは言葉では言い表せない」と声を詰まらせます。その一方で、「(関電批判を)口にしにくいという面もないとは言えない」と語り、下請け会社で働く複雑な胸中をのぞかせます。
男性は「事故が起こった以上、今までのコスト低減と短縮点検が間違っていたことは確か」と語り、「県警はとことん調べ、(事故の)責任の所在を明らかにしてほしい」と話しました。