全国各地の地域特性と再生可能エネルギー資源を活用したエネルギー生産に取り組むことをめざす「市民・地域共同発電所全国フォーラム」(実行委員会主催)が、長野県飯田市で開催されました(5~7日)。今年で10回目となるフォーラムには、のべ400人が参加。市民・地域共同発電所はすでに1000基を超え、フォーラムはその普及拡大を後押ししています。(党国会議員団事務局・安部由美子)
初日の全体会では、全国で最も多くの市民・地域共同発電所がある飯田市の牧野光朗市長が「市民参加による再エネ事業からの持続可能な地域づくり」について報告。同市では、地域環境権条例で「地域の人や土地と密接に関わりある再エネ資源は、市民の総有財産。そこから生まれるエネルギーは市民が優先的に活用でき、その収益を財源に自らの手で地域づくりをしていく権利がある」と定めていることを紹介。人口減少、高齢化が加速し、保育園閉園危機になった地域が、住民出資で小水力発電所を運営し、売電収益を活用して地域課題に立ち向かい園児数も6人に増えるなど、中山間地域の危機的な状況をコミュニティービジネスで解決していることを説明しました。
社会構造を変革
信州大学の茅野恒秀准教授は「エネルギー転換の社会構想と変革の道」と題して講演。茅野氏は、長野県では「経済は成長しつつ、温室効果ガス排出量とエネルギー消費量の削減がすすむ社会構造を有する地域社会」づくり、10キロワット以下の太陽光発電の県民1人あたり導入量が全国3位で小規模分散型の設備導入が顕著に進んでいることを紹介。大規模なメガソーラー事業計画もあるが、企業に匹敵する件数を個人が事業化しており、エネルギー転換の社会的意味、地域資源の価値に気づけば、地域にとって大きな力になると述べました。
地元経済活性化
2日目の分科会では、里山資源を生かす小規模バイオマス利用の推進、地域新電力と自治体政策などのテーマに分かれて、各分野の専門家、再エネ事業に取り組んでいる事業者、団体が報告。2025年までに輸送分野も含め再エネ100%をめざすデンマーク・コペンハーゲン市など世界の動きや、地域電力を「地消」する付加価値を、雇用、地域への再投資で地元に残して経済活性化を図ることなどが語られました。
分科会終了後の全体会で「持続可能で自立的に発展し続ける地域づくりを進めると同時に、原発や化石燃料に依存しない安心・安全なエネルギー社会の実現を目指す。できるだけ早く自然エネルギー100%社会になるよう尽力する」とのアピールを採択。国に対し、パリ協定実現に向けた温室効果ガス削減目標と再エネ導入目標の設定、再エネの優先接続・優先給電、地産地消エネルギー推進のための送電線利用ルールの改善などを求めることを確認しました。
(「しんぶん赤旗」2018年10月15日より転載)