需要抑制計画の説明なく
北海道の市民生活に甚大な影響を及ぼした大規模停電(ブラックアウト)から1カ月余。ブラックアウトをめぐっては、認可法人「電力広域的運営推進機関」の第三者委員会が原因究明を主導し、10月中に中間報告を行うとしています。一方で、災害時に地域の電源を活用できなかった反省など、北電の運営体制にはさらなる検証が求められます。(岡本あゆ)
今回の大規模停電では、地震を受け6日に緊急停止した苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(総出力165万キロワット)に全道の電力の半分を依存していたことがあだとなり、需要と供給のバランスが乱れ、大規模停電につながったとみられています。
豊富なエネ源
先月21日の第1回検証委員会では、大規模停電の直前、北電は一部のエリアを強制停電させて需要を減らす「需要抑制」を行って需給バランスを保とうとしていたことが分かりました。6日の午前3時8~9分にかけ、計130万キロワットの需要抑制が実施されました。
需要抑制計画について、北電は本紙の取材に「計画は以前からあり、苫東厚真発電所が停止した場合の対象エリアも決まっていたはずだ」とした上で、対象自治体への説明は「していないのではないか」としました。
道庁によると、北海道は風力発電(約32万キロワット)と中小水力発電(約83万キロワット)が全国1位など、地域に豊富なエネルギー源を有しています。
北海道大学工学研究院の山形定(さだむ)助教は、「地元の再生可能エネルギー電力を停電の際に地域内で送電できず、活用できなかった。事前にそのための体制を整えておくことが必要だった」と指摘。
「何かあったら需要抑制のために一部のエリアが切られると事前に周知されていれば、いざという時に地元の再生可能エネルギー電力を地域で活用する体制についても、違った議論ができていたのでは」と疑問を呈します。
道民への情報公開について、北電は「電力契約の約款に、そこまで詳しくは書いていないが“故障があった際、使用制限する場合がある”との記載はある。周知していると言えるかどうか…」と言葉を濁します。
買い取り拒む
地震の被害以上に、停電で大きな打撃を受けた道東・道北地域。地域電源を開発する取り組みも行われていましたが、壁にぶつかっていました。
酪農地帯・十勝では農協を中心に、家畜のふん尿から発生したメタンガスを利用するバイオマス発電の拡大計画が進んでいました。しかし今年4月、北電は送電網の空きがないとして電力買い取りを拒否。少なくとも1万3900キロワット超の発電計画が中断を余儀なくされていました。
山形氏は「送電線の容量がいっぱいだと再生可能エネルギー電力の受け入れを断ってきたのに、北電自前の発電所が停止した時には一方的に電気を止めるのは問題だ」と批判します。
買い取り拒否の背景には、苫東厚真発電所や泊原発といった大規模発電所がすでにある以上、建設のコストのもとをとりたい企業の論理があると山形氏は考えます。「それは企業としては当然の経済合理性。ただ、今回のようなことが起きた時に電力供給を維持できるかという、備えの考えが欠けていたのではないか」
大電源への一極集中のぜい弱性と、中小規模の発電施設を各地域に分散する、災害に強い電力網の必要性が浮き彫りになった今回の大停電。地域ごとに電力を自給する電力網の整備は欧州諸国などでも進んでいます。
市民の暮らしと命にかかわる送電の問題。停電の原因のみならず、北電や国がこれまで電力網をどう運用してきたかの検証が求められます。
(「しんぶん赤旗」2018年10月15日より転載)