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東電原発事故裁判 あすから旧経営陣に質問・・津波対策先送り焦点 予見できたのに運転

東京電力福島第1原発(右から)1号機、2号機、3号機、4号機=2月(本紙チャーター機から撮影)

 東京電力福島第1原発事故をめぐって、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の公判(東京地裁、永渕健一裁判長)は、16日から被告人3人への質問が始まります。16、17日が元副社長の武藤栄被告(68)、19日が元副社長の武黒一郎被告(72)、30日が元会長の勝俣恒久被告(78)です。これまでの公判で示された証拠や証言で、事故の3年前の2008年7月末、武藤被告が出席した会議で、津波対策を取る方向が先送りされた経緯が明らかになっています。

東京地裁

 裁判の主な争点は、3人が巨大津波を予測できたか、対策を取れば事故を防げたか―です。昨年6月の初公判で、3人は巨大津波は予見できず、対策しても事故を防げなかったと無罪を主張しています。

 東電では、国の機関が02年に公表した地震予測「長期評価」を取り入れた津波評価をもとに、08年1月に子会社・東電設計に福島第1原発の津波高の計算を業務委託。2月に3人も出席した「中越沖地震対応打ち合わせ」(通称「御前会議」)に「長期評価」を取り入れる方針や、その場合に津波高が「7・7メートル以上」になると報告され、勝俣被告らから異論は出ませんでした。3月11日、勝俣被告らが出席した「常務会」で、津波対策の実施を正式決定します。

 1週間後の18日、東電設計と東電の打ち合わせで津波高が最大15・7メートルになる結果が示されました。防潮堤設置の検討も子会社に依頼。武藤被告が出席した同年6月の会議では、「長期評価」を採用して津波対策を取る方向で説明がされ、沖合に防波堤を造る手続きの資料も出され、費用は数百億円に上るとされました。

 しかし、7月31日に開かれた会議で武藤被告は「研究しよう」などと述べ、津波対策を先送りしました。この時、津波対策が必要と考えていた社員は「力が抜けた」と証言。津波対策は取られないまま事故に至りました。

 方針転換が武藤被告だけの判断なのかどうか。社内で進められていた「長期評価」を採用した津波対策の検討状況に対し、3人がどう説明するかが注目されます。

(「しんぶん赤旗」2018年10月15日より転載)