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巨大噴火の危険想定・・「社会通念」で、というが

 陽子 広島高裁が、伊方原発の運転差し止めを命じた去年12月の決定を取り消したけど、どういうことなの?

 みどり 決定文を読んでみたの。原子力規制委員会が原発審査で使う「火山ガイド」について、火山の噴火の時期や程度を相当前の段階で予測することができることを前提にしている点が「不合理」と指摘している。

 陽子 すでにそれは、多くの火山学者が指摘していたわね。

リスクを無視し

 みどり 決定は、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇カルデラの約9万年前の巨大噴火による火砕流が到達していないとは判断できないと認めている。でも巨大噴火の危険をどう想定するかは、不合理な火山ガイドではなく「社会通念」を基に判断するといっているの。

 陽子 その社会通念って何かしら。

 みどり 決定ではこういっている。国は巨大噴火を想定した具体的対策を策定していないし、「国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない」と。だから、巨大噴火のリスクは、原発の安全確保の上で想定しなくても「安全性に欠けるところはないというのが現時点における我が国の社会通念」だと決めつけている。それで巨大噴火を除いて判断すれば、火砕流が伊方原発に「到達する可能性が十分小さい」と評価できるっていうの。

 陽子 つまり巨大噴火のリスクは無視しようということね。

 みどり 規制委が今年3月、火山ガイドの「基本的考え方」という文書を出して、巨大噴火によるリスクは社会通念上容認される水準と主張しているの。今回の決定はそれに沿ったものよ。

司法の役割放棄

 陽子 原発事故が起きれば、広い地域が長期間被害を受けるのは東京電力福島第1原発事故でも明らかよ。原子力災害は一般防災とは全く異質。一般防災で対策が取られていないことを理由にするのはおかしいわ。

 みどり それにかりに巨大噴火の発生の兆候を認識した場合、原発から核燃料を運び出すには数年前に原発を止める必要があるから、手遅れになる恐れが高いの。

 陽子 裁判所が、司法の役割を放棄したような行政追随、現状追認の判断は問題ね。

(「しんぶん赤旗」2018年10月2日より転載)