福島第1原発では、炉心の冷却などで高濃度の放射能汚染水が発生しています。東電は、この汚染水を、放射性物質の濃度を下げる装置「ALPS(アルプス)」に通すことで、トリチウム以外の62種類の放射性物質濃度を除去できると説明してきました。
現在、アルプスを通した汚染水約94万トンを福島第1原発の敷地内にあるタンクで保管しています。このうち89万トンについて分析した結果、約8割の75万トンが、基準値を上回る濃度だと推定されました。一部には基準値の約2万倍の物質もあります。東電は「放射性物質の吸着剤の性能低下や、設備の不具合が原因と考えられる」と説明しています。
汚染水対策を議論している経済産業省の汚染水処理対策委員会のある委員は、本紙の取材に「東電から一部、基準を超えた放射性物質が残っているとは聞いていたが、『8割』とは聞いていない。テレビのニュースで知りびっくりした」といいます。
東電は、保管中の汚染水を処分する際は、再びアルプスで処理して濃度を下げる方針です。ただアルプスの処理能力は限られており、基準値を超えた放射性物質を除去するには時間がかかることが予想されます。
政府は放置 責任重大
トリチウム汚染水の扱いをめぐって開かれた公聴会で意見表明した伊東達也原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員の話
トリチウム以外の放射性物質が基準値を超えて残っていることを東京電力は知りながら、なぜきちんと説明してこなかったのか。
8月の公聴会の直前に大問題になり、東電は公聴会でも説明する機会はあったはずです。うそをついたまま公聴会に臨んだと言われても仕方がない。二重三重に隠蔽(いんぺい)したということになります。こうした事態を放置した政府は何をしていたのか、政府の責任も大きい。
事故のメルトダウン(炉心溶融)隠しなど、東電には会社としての隠蔽体質が、まだ残っていると言わざるをえません。地元住民らの東電に対する不信感は一層高まるでしょう。
約8割が基準値を超えているということは、事態が振り出しに戻ったようなものです。汚染水を「再処理」するにしても、相当な長期戦になります。今後、汚染水を保管するタンクの場所をどう確保するか、考えるべきです。
(「しんぶん赤旗」2018年9月30日より転載)