四国電力の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)をめぐって、周辺住民が運転差し止めを求めていた仮処分で、広島高裁と大分地裁が再稼働を認める決定を出しました。大きな争点となった火山噴火のリスクについては、根拠も示さずに同原発に及ぶ恐れは小さいと決めつけるなど、国民の不安に全く向き合おうとしない不当なものです。再稼働を推進する国や電力会社のいい分をそのまま追認するだけでは、司法の役割は果たせません。「安全神話」の復活は認められません。
火山噴火のリスクを軽視
伊方原発は四国の最西端、佐田岬半島の付け根にあります。原発の北側およそ8キロには国内最大級の断層「中央構造線断層帯」が走っているほか、南海トラフ巨大地震の震源域内でもあります。
伊方原発に重大な事故が起これば、半島の住民約4700人は陸路からの逃げ場はなく、海路を逃げるしかありません。しかし、実際に避難するのはきわめて困難です。同原発の再稼働を認めた国と原子力規制委員会の安全無視の姿勢は重大です。
伊方原発の危険をふまえ運転差し止めを命じたのが、昨年12月の広島高裁の仮処分決定でした。同原発から約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラで約9万年前に起きた巨大噴火の際に、火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が小さいとはいえない、として原発の「立地は不適」と結論付けたのです。火山灰などの噴出量も四国電力の想定は「過少」と指摘するなど、火山国日本のどこにでもあるリスクに目を向けた重要な判断でした。
この決定を覆した今回の広島高裁決定(25日)は、安全性に問題がないとする四国電力や国の主張を丸ごと容認したものに他なりません。巨大噴火の予知は困難だと認めつつも、その可能性は低く国が破局的噴火を想定した対策をとっていないことなどを理由に、予測が難しい火山の巨大噴火のリスクは「社会通念」上受け入れられるという理屈を持ちだしたのです。原発の特別な危険を度外視した乱暴な議論です。
原発はひとたび事故を起こせば、極めて広範な地域に、長期にわたって深刻な被害を及ぼす異質の危険があるものです。
それは東京電力福島第1原発事故が7年半を過ぎても収束せず、県の発表でも約4万4千人が避難を続け、そのほかにも多くの人がふるさとに戻ることができないなどの被害実態からも明らかです。
国が破局的噴火対策をとっていないから伊方原発の安全性に問題ないというのは、まさに「安全神話」そのものです。「社会通念」という言葉で原発再稼働を認めることは無責任です。
福島事故を忘れるな
大分地裁決定(28日)も「社会通念」をタテに、規制委や四国電力の地震や火山への対策についての主張に「不合理はない」と全面追従です。四国電力は広島高裁の今回の決定で「お墨付き」を得たとして、10月27日から伊方原発3号機を再稼働させるとしています。
福島原発事故を忘れたかのように、原発を次々と再稼働させる安倍晋三政権の姿勢は、国民の安全を危険にさらすものです。安倍政権を追い込むたたかいを強めることが必要です。
(「しんぶん赤旗」2018年9月30日より転載)