11月末に運転40年を迎える老朽原発・日本原子力発電(原電)東海第2原発(茨城県東海村)について、原子力規制委員会は26日にも新規制基準に「合格」したとの審査書を決定しようとしています。ところが、台風21号などの災害から、改めて同原発の重大課題が浮かび上がっています。
(松沼環)
あす規制委「合格」か
台風21号では関西国際空港の連絡橋に2591トンのタンカーが衝突しました。高潮と風に流されたタンカーは橋梁(きょうりょう)に衝突し、道路橋を破壊しました。東日本大震災でも、多くの船舶が漂流物となり被害を拡大させました。
高潮や津波による漂流物の影響によって、原発の津波対策で設置された防潮壁や防潮扉への衝突や取水口がふさがれる可能性が指摘されています。取水口が機能しなくなれば、原子炉の冷却が困難になり、メルトダウン(炉心溶融)につながる危険性があります。
規制委による東海第2原発の審査では、敷地内の岸壁に停泊する燃料などの輸送船は、津波警報発表時には緊急退避するため「漂流物とはならない」と原電が評価しています。
原電は、敷地内の50トンの漂流物の衝突を考えるとしています。原電は、漂流物となり原発の津波防護施設などに影響する可能性があるとした施設・設備のうち最大の作業台船が44トンであったことから、50トンの漂流物が衝突することを考慮したのだといいます。
しかし、東海第2原発の周辺には、北方約3キロに茨城港日立港区が、南方約4キロに同港常陸那珂港区があります。北方約4・5キロには約40の漁船が係留されている久慈漁港があります。日立港区にはLNG(液化天然ガス)基地が立地し、常陸那珂港区には火力発電所がある地域です。このため、付近の海域には大型タンカーやフェリーが行き交います。
原電は、面積が最も大きい鉄骨構造物の外装板でも、取水口が完全にふさがることはないため、取水が可能だとしています。
また、近くの港で船舶が停泊しているときに津波警報などが発表された場合は「荷役及び作業を中止した上で、緊急退避または係留避泊する運用としていることから、漂流物とならない」などと評価。規制委はそれを認めて、審査書案をまとめています。
しかし、台風21号のように強風で流されるだけでなく、逃げ遅れる可能性もあります。
実際、東日本大震災でも東日本太平洋沿岸では避難しようとした船舶のうち避難できなかった船舶が22%あったと国土交通省が報告しています。この報告では、避難に要した時間が60分程度の船舶が多くを占めています。
(「しんぶん赤旗」2018年9月25日より転載)