東京電力福島第1原発事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人の公判は今月、事故後に死亡した双葉病院(福島県大熊町)の入院患者らをめぐって、元医師や看護師、職員が証言(既報)するとともに、遺族の調書が読み上げられました。遺族は「東電と国は責任を取って」「事故がなければ長く生きていられた」と述べました。
第1原発から南西約4・5キロの場所にある双葉病院の入院患者と、約4・4キロの場所にある同系列の老人介護保健施設「ドーヴィル双葉」の入所者のうち、合わせて44人が、避難中の車内や搬送先の施設などで死亡しました。
起訴状で3人は、津波の襲来で事故が発生する可能性を予見できたのに防護措置を取る義務を怠り、漫然と運転を継続。長期間の避難を余儀なくされ衰弱状態に陥った患者らを死亡させたとしています。
遺族の調書を読み上げた検察官役の指定弁護士は時折、声を詰まらせていました。
老人介護保健施設に入所していた夫が避難する途中に亡くなった妻は「国も東電も、地震や津波が来ても大丈夫だといっていたのに。自然災害で事故が起きた時どうするのか。何も考えなかったとしか思えない」と国と東電を批判。「思い出が詰まった家、ふるさとを失ったことを考えると、東電と国の責任のある人は、きちんと責任を取ってほしい」と訴えました。
搬送先で父のひつぎを開けるのを「汚染されているから」と止められた遺族の調書も。
双葉病院に入院していた65歳の弟が避難途中に亡くなった女性は「唯一の肉親。事故がなければ亡くなることはなかった」と心情を明かしました。その上で、東電が事故対応でバッテリーが不足していたことを挙げて「緊急事態への備えがあまりにもできていなかった。二度とこんな事故を起こさないでほしい」と語りました。
(「しんぶん赤旗」2018年9月24日より転載)