第5次エネルギー基本計画の閣議決定を受けて、環境団体や研究者らが7月3日、国会内で記者会見し、計画内容に多くの誤りや誤解を招くような記述が含まれていると批判しました。
環境団体FoE Japanの満田夏花事務局長は「『原発は廉価』『再生可能エネルギーは高価』などと、ファクト(事実)が曲げられ、原発維持を正当化するような誘導が行われている」と批判。
原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「原発について『開発もこれから』としているが、4月に米原発最大手エクセロンの上級副社長が“コストが高すぎるため(小型炉を含め)これ以上の新設はないだろう”と発言している。開発しても買い手がないのが現状だ」と疑問視。
さらに「放射性廃棄物を適切に処理・処分…有害度低減」との記述についても、国の原子力委員会が6月、有害度を減らせるのは限られた場合で、放射性廃棄物の地層処分をなくすことはできないとの意見を出していると指摘。「願望先行だ」と強調しました。
A SEED JAPANの西島香織事務局長は、2012年の国のエネルギー・環境戦略では全国11カ所で行われた公聴会が、今回は一度も開かれなかったと批判。「1カ月という短期間のパブリックコメント募集のみで、有権者不在のまま計画が決定され、コメントがどう反映されたかも説明がない」と話しました。
再エネ社会実現に障害 龍谷大学教授・大島堅一氏の話
2015年に策定したエネルギーミックス(長期エネルギー需給見通し)を前提にしており、世界で起きている新たな課題にまったく対応できないものになっています。
変化の一つは、15年の暮れにできたパリ協定で、これに対応できるものになっていません。
もう一つは、原子力を20~22%と言っていますが、これは政府の計画でも実現不可能です。そもそも社会に対して重大な被害をもたらした原子力に過大な目標を掲げていることは許されません。原発ゼロの社会に向けたビジョンをもっと進めるべきです。
原子力の退潮はますます明らかです。東芝が経営危機に陥ったのは、原子力に手を染めたからです。そういうことがはっきりしたにもかかわらず、15年のエネルギーミックスをそのまま使い、14年のエネルギー基本計画の内容をほぼ踏襲したことは許されません。これは、再生可能エネルギーを中心とする新たな社会をつくるのに障害になってきます。
今でも、原発が再稼働すると、伸びてきた再生可能エネルギーの方を止めるということになります。電力が余るのなら原子力の方を止めるべきです。しかし、原子力をベースロードと位置付けているから、再生可能エネルギーの方が止められてしまうのです。そういう意味でも大変問題の計画です。
(「しんぶん赤旗」2018年7月4日より転載)