原発推進に「全力」明記・・エネルギー基本計画閣議決定で、共産党が撤回求める
安倍政権は7月3日、国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「第5次エネルギー基本計画」を閣議決定しました。2030年度の電源構成で原発比率20~22%の実現などに「全力を挙げる」と明記し、50年に向けた戦略でも原発を「脱炭素化の選択肢」と位置づけるなど原発に固執する内容です。
日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者の藤野保史衆院議員は同日、「国民世論に背く原発推進路線の撤回を求める」とする談話を発表し、「すべての原発の再稼働をねらうものである。日本を原発依存社会へと逆戻りさせるものであり、言語道断である」と述べました。
原案に対する意見公募で、5万3403人が「早期原発ゼロ」などを求める署名を寄せたと経済産業省が発表。しかし、こうした声は無視され原発固執は原案通り。前回計画(14年)を踏襲し、原発依存度は「可能な限り低減させる」としながら、「重要なベースロード電源」と位置づけて再稼働を推進しています。
また、核兵器の材料にもなる、原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムについて「保有量の削減に取り組む」とし、そのためにプルサーマル(プルトニウムを含む核燃料を普通の原発で使う)を推進するなど、破たんの明らかな核燃料サイクル政策をあくまで進める方針です。
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは「主力電源化への布石としての取り組みを早期に進める」とする一方、二酸化炭素の排出が多い石炭火力は「重要なベースロード電源」と固執しています。
国民世論に背く原発推進路線の撤回を求める
藤野保史 党原発・エネルギー問題対策委員会 責任者
日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会の藤野保史責任者は7月3日、安倍政権が同日閣議決定した「エネルギー基本計画」について次の談話を発表しました。
安倍政権は本日、新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定した。
「基本計画」は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度の電力の約2割を原発で賄うとしている。これは、すべての原発の再稼働をねらうものである。日本を原発依存社会へと逆戻りさせるものであり、言語道断である。
福島原発事故は、原発の抱える危険性を明らかにした。「原発ゼロ」「再稼働反対」は、ゆるがぬ国民多数の声となっている。この国民世論を受けとめ、「基本計画」を撤回するよう安倍政権に強く求める。
いま世界では、温暖化対策をはじめ持続可能な社会への転換のために、エネルギー政策の柱を省エネルギーと再生可能エネルギーに移している。日本でも、省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーを3割、4割へと抜本的に増やすことにもっと積極的に取り組むことが求められている。原発や石炭火力の推進に固執する「基本計画」は、世界の流れに逆行するものである。
原発は、ひとたび重大事故が起これば、環境に深刻な被害を与えるものであり、地球温暖化対策など環境問題を口実に原発を推進することは許されない。
福島原発事故による被害の甚大さを考えれば、原発ほど高コストの電源はない。欧米では、安全対策のために原発の建設費が膨れ上がっている。原発が高コスト電源であり経済性がないことは明らかである。
日本社会は福島原発事故以後、2年近く稼働原発ゼロを経験し、その後も原発の電力比率は約2%(2016年度)である。原発ゼロで十分やっていけることは実証されている。
「基本計画」は、依然として核燃料サイクル推進を掲げているが、プルトニウム利用の本命であった高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉となり、核燃料サイクルは完全に破たんしている。いまでも日本が保有する多量のプルトニウムには、核兵器原料への転用を懸念して厳しい目が向けられている。核燃料サイクルから撤退すべきである。
原発には、必要性も経済性もない。原発を動かせば、処理の見通しがない核のゴミを増やすだけである。原発の再稼働も核燃料サイクルも断念し、原発ゼロの日本を決断することこそ、現実的な選択である。
日本共産党は、立憲民主党、自由党、社会民主党と共同で、政治の意思として原発ゼロを決断する「原発ゼロ基本法案」を提出している。原発の再稼働はさせず、動いているものは止めて、原発ゼロの実現を具体的にすすめるものである。日本共産党は、市民の皆さんとともに、基本法を制定し原発ゼロの日本を実現するために、全力をあげる。
(「しんぶん赤旗」2018年7月4日より転載)