東京電力福島第1原発事故をめぐって、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人の第18回公判が6月20日、東京地裁でありました。事故前、同原発の津波対策を担った東電社員が証言し。2008年の当時、東電の原子力立地本部副部長だった元副社長の武藤栄被告(67)に、政府機関の評価に基づいて津波対策の工事を検討するよう提言していたと述べました。
政府機関である地震調査研究推進本部(地震本部)は、02年に“福島沖のどこでも、津波地震が起きる可能性がある”とする地震予測「長期評価」を公表。東電は、長期評価に基づけば最大15・7メートルの津波が原発を襲うおそれがあるとの計算を08年に得ていました。
社員は東電の土木調査グループに所属。長期評価について「(地震本部は)国の組織で、権威である研究者が参加している」「(津波)対策工事が必要になると思っていた」と証言。当時、旧原子力安全・保安院から最新の知見で原発の安全性の再評価をするよう求められており、「地震本部の見解を取り入れずに、審査が通るのは難しいと思った」と述べました。
検察官役の指定弁護士は「現状(福島沖で津波地震が起きる可能性に)明確な否定材料がない」と記された、08年当時の東電社内のメモを提出しました。
社員は「15・7メートルという数字、対策の必要性は当然(武藤被告に)説明した」「対策を意思決定してもらいたいと思い報告した」とした上で、「長期評価を取り入れない、対策工事を行わないとは想像していなかった」と証言しました。
その後の津波対策に関する社内のワーキンググループでも、「対策をとらないと、非常用海水ポンプなど重要な設備が動かなくなる」との指摘があったと話しました。
次の公判は7月6日で同じ証人が証言します。
(「しんぶん赤旗」2018年6月21日より転載)