3年がかりのシリーズの最初のテーマ「地方から見た戦後」の後半は東北4県の歩みを追います。その第1回は東京電力福島第1原発が立地する福島県浜通りの双葉町、大熊町から発信されます。ほとんどの地域が放射能汚染で立ち入りができません。一時帰宅の車が「原子力明るい未来のエネルギー」というアーチの看板をくぐっていきます。
断崖が連なる海岸、やせた土地、浜通りを支配したのは歴史的にも貧しさでした。開拓、塩田開発、貧しさからの脱出の苦闘が描かれます。さらに原発誘致の歴史、電源3法による交付金、立地後豊かになった街の変化、続発する事故、反対運動の行方、住民の葛藤などが描かれます。
大震災の4ヵ月後に亡くなった、双葉町元町長・岩本忠夫さんは、反対運動のリーダーでしたが、町長になってからは、原発増設を求めるようになります。番組はその“変節”の背景を町の財政事情、人びとの生の声で検証していきます。
幸せを求めながら、故郷を失うことになる無念。多くの声の交差の中に、けっして単純でないこの国の“犠牲の構造”が浮かび上がってきます。
(荻野谷正博)